千川の住宅

東京都心の18坪の狭小敷地に建つ２世帯住宅の計画である。 低層住居地域での計画ということもあり、敷地いっぱいに建ててもクライアントの要望に叶う間取りや空間のイメージにはなかなか届かず、法的にも面積的にも難しい条件下で様々な案を練りながら検討を進めた。 厳しい容積率制限および高さ制限に対して、今回の計画では容積率算定に含まれない空間の活用として地面を通常よりも少し深く掘って部分的な半地下空間を作り、半地下空間を起点としたスキップフロアとなった構成に対しては天空率算定による斜線緩和活用が、より高さを生かせる空間構成の実現につながった。 天空率緩和の恩恵を受けることで内部空間は地階からロフトまで仕切りなく高さ方向への広がりを最大限に感じられる空間構成となり、結果的に立ち上がった外観のフォルムを斜線制限の影響を受けずにデザインできたことで、周囲の画一的な街並みの中では特別にアイコニックな存在感を放つ建物となった。 特徴的な建物のイメージとは対照的に内部には中庭を設け、各空間に安定した光や風を取り込み、周囲の喧騒や視線を気にすることなく落ち着いて日常を過ごせる内部空間を演出した。素朴なサクラ無垢材の床板をベースに深みのあるピンクやグリーンで塗られた壁や天井は光のあたり方によって表情を変化させ、住まい手のこだわりが詰まった照明器具やインテリアが空間に彩りを添えている。