補足資料


PROJECT MEMBER
そのロケーションの背景にある地域の自然や文化的魅力を表現するディスティネーションホテル「MIRU COLLECTION」。世界自然遺産として登録され、生物多様性の基準を高く評価された奄美大島にある「MIRU AMAMI」に新しく14棟の宿泊棟を増築するというプロジェクトだった。 この計画において重視したのは、「この貴重な大自然にお邪魔する」という感覚である。従来のリゾート開発のように、森やビーチを大規模に切り開き、大量のコンクリートを用いた基礎工事や多くの廃棄物を生む手法ではなく、可能な限り環境負荷を抑えた“自然に溶け込む建築”の在り方を模索した。母なる大地に還るような感覚を意識し、自然現象を受け入れ、活かしながらアップグレードしていく建築を成立させたいと考えた。 設計において追求したのは、圧倒的な大自然に対して「負ける建築」である。大きな建築を一棟構えるのではなく、小さな建築を積み重ねる構成とすることで、雨や風を受ける面積を最小限に抑えた。また、それぞれの建物を高床式として地面から浮かせることで、流れてきた雨や風を受け流し、自然の循環を妨げない構造としている。自然と拮抗するのではなく、身を委ね、調和するための建築である。 建設手法においても、自然環境への負荷を最小化するための工夫を重ねた。部材の大部分を事前に工場で加工するプレファブリケーション工法を採用し、床・壁・天井などをパネル化して製造。現場ではそれらを組み合わせることで施工期間を短縮し、騒音や廃棄物の発生を抑えた。高い施工安全性とメンテナンス性を確保すると同時に、国産材の活用を前提とした高い木質化率を追求している点も、本プロジェクトの大きな特徴である。 ランドスケープにおいては、在来種や奄美の気候に適応した植物を丁寧に調査し、ヴィラ周辺だけでなく屋上やテラスにも配置した。周囲の自然と連続する森をつくり出すことで、動植物にとって新たな生息地となり、生物多様性に寄与することを目指している。建築によって自然を分断するのではなく、自然の一部として再編していく試みである。 マテリアルのセレクトにおいても、奄美大島の環境と一体となることを最優先に考えた。外装材には国産杉に特殊加工を施し、フランウッド化することで、高湿度かつ台風の影響を受けやすい環境下でも高い耐久性能を確保している。インテリアでは、丸みを帯びたデザインを取り入れ、空間を分断せず、有機的に流れるような構成とした。炭化コルク、芭蕉和紙、夜光貝など、経年変化を楽しめる自然由来の素材を組み合わせ、室内にいながらも自然環境に触れる体験を生み出している。同時に、これらの素材を断熱などの機能としても活用し、エネルギーロスを抑える設計としている。 ”奄美の森は奇跡の森である”とも言われる奄美大島の大自然のなかで、地中に潜っていくような感覚で「MIRU AMAMI」での滞在を楽しんでいただけたらと思っている。
