
補足資料
PROJECT MEMBER
空間と状況のリユース 仙台のブランド古着リユース店「LIFE」に対する部分リノベーションは、既存のインダストリアルな倉庫的雰囲気を尊重しつつ、店舗の“顔”と買取の機能を明快に再編することを目的としている。大きくつくり替えるのではなく「既にあるものを活かしながら、要素をそぎ落として分かりやすくする」ことが全体の設計姿勢である。 見えることと見せないことの均衡 店舗は複数の時間幅(買う/売る/滞在する)を同一平面に抱えるため、どこを顕在化させるかが肝となる。レジや査定の位置は、店舗の核たる“情報のやり取り”の場であり、ここが曖昧だと顧客導線は混乱し、機能も低下する。今回の介入はその核を再構成し、受け手に対して即時に理解できる「顔」をつくることに注力している。既存のざっくりとした鉄骨・仕上げを背景(ground)に据え、そこに明確なフィギュア(counter/個室の入口)を置くことで、店舗全体の読みやすさを回復している。 インダストリアルな露出材を残しつつ、必要最小限の造作(カウンター、プランター、個室の被覆)で機能を補完する手法は、リユースショップという業態の思想とも共鳴する。過剰な新規性を求めず、既存の脈絡を読み解いて最新の“見せ方”を重ねることで、空間に新旧の層が生まれる。 オブジェとしてのカウンター — 物質とスケールの整合 入口正面に据えられた長さ5mのモルタルの塊のようなカウンターは、店舗の顔としてのスケールを示す“簡潔なオブジェ”である。大きさと質量感で空間の重心を定めつつ、その形態は過度に装飾されず、倉庫の粗さと調和するよう設計されている。カウンターを単なる作業台に留めず“場を示す記号”に変換した点が、この計画の機能的かつ象徴的な強さだ。 査定作業など“見られたくない”部分に対しては、単純な壁で遮るのではなく、鏡面を持つグリーンプランターで視線を撹乱しつつ隠蔽するという、視覚的解法が選ばれた。ミラーは周囲を映し込み、プランターは物理的な仕切りを果たす一方で、その存在感を薄め、空間全体の連続性を損なわない。ここでは「隠す=消す」のではなく「反射させて溶かす」ことで、店舗の表情を豊かにするという戦術が効果的に働いている。 閾(しきい)としての「隠れ部屋」— あちらとこちらをつなぐ体験 バックヤード側の買取用個室は、あからさまな入口を避け、古いガラスショーケースの佇まいを想起させる隠し扉のような入り口を用意することで、入室を一種の「移行体験」にしている。 ドアを開けると、手前の白い上品な個室と奥のグレートーンのシックな個室という対照的な内向空間が待ち受ける。この「あちらとこちら」を往復する感覚は、物理的な移動を通じて購買/査定という行為に心理的な距離感と特別感を与える。 U字の曲壁と間接照明は、天井と壁を連続させることで包まれ感をつくり、会話のプライバシー性と安心感を同時に確保するデザインになっている。 本プロジェクトは、表層的な美しさを追うのではなく、視線の流れ、行為の場、プライバシーの確保という空間的課題に対して最小限の手を入れて解答を与えた。カウンターのオブジェ性、ミラー・プランターの視覚戦略、隠れた閾を介した個室の配置は、店舗運営の実務と来店者の心理的体験を両立させている。 新旧の編集をすることで、“見せること”と“隠すこと”が軽やかに共存するようアップデートされ、リユースされたプロジェクトである。
