
下地窓の家 House with Naked Windows 貸店舗付き住宅ビルのワンフロアの改修計画である. 対象物件は広島市の中心部にあり,間口が狭く奥行きの深い建物形状をしている. 細長いワンルーム空間の中に,緩やかにつながるいくつかの居場所をつくることを目指した. これまでの生活の履歴が積み重なった既存天井面には,使っていない大型の空調機器や点検口,埋め込み照明など撤去を待つものが点在していた. その撤去の工程もデザインすることを試み,下地窓に倣った減算的な手法を取り入れた. 天井面の撤去範囲は,野縁を露出させることで自由な形状・配置が可能となり,撤去物を包含する大きな下地窓となった. そもそも下地窓は,外の景色を見ることよりも,室内に光を取り込む役割が大きい. 居住者の一人は目に障碍があり,照度を確保する必要があったので,下地窓本来の採光の機能も準えることとした. 天井に開けた下地窓に光源を設けて,薄暗くなりがちな中央部分に光だまりを設えた. そこに,切り抜いた天井面と対をなす加算のデザインによるテーブルを添えることで,家族が集まる居場所を作り出している.
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