ニコン 本社/イノベーションセンター

ビルディングタイプ
オフィスビル
8
271
日本 東京都

DATA

CREDIT

  • 撮影
    エスエス 島尾 望 / 横山祥平
  • 設計
    三菱地所設計
  • 施工
    株式会社安藤・間 東京支店

□ 世界の交流の中心となるGlobal Head Quartersの創出 ニコンゆかりの地に本社機能やR&D部門を集約し、先進開発機能の強化やシナジー創出を図り、持続的成長の実現を意図したプロジェクト。3,000人を超える社員だけでなく、ニコンファン、地域住民、取引先など、多様な人びとがニコンを知り、発見・交流・体験できる場を創出すること、交流を生みイノベーションを興すワークプレイスを創ることが重要な課題であった。 また、全世界にファンのいる企業の“Global Head Quarters”として、ニコンの「デザインと機能が統合された製品やサービス」を想起させるべく、建築においても空間と機能の統合を意図した計画を考えた。 □ コミュニケーションフレームでつながる新しいオフィス オフィスは、人員数や働き方の変化に追従すべく、約150m×60mの広大な平面を積層しつつ、平面的な距離や階による分断を解消し、部門を超えた交流を促す仕掛けが必要だと考えた。そこで、整形な執務空間で細長いコアをサンドイッチする平面構成を考案した。この2つのコアには、リフレッシュスペース・メールステーション・キッチン・トイレ・複合機ステーション等の多目的な空間を集約して偶発的な交流の場となることを意図し、従来の概念に代わる新たな空間として、コミュニケーションフレームと呼ぶこととした。ここにメイン階段を階ごとに交互に配置することで、階を超えて2本のコミュニケーションフレームを行き来でき、オフィスエリア全体をつなぐ計画とした。執務空間は奥行16mと設定することで、昼光利用やコミュニケーションフレームへのアクセスを容易にする。この構成により、さまざまな方向に人の動きが発生し、街のような回遊性が生まれた。デスクワークにとどまらず新たな発見や交流の場が求められる現代のオフィスにおいて、有効な手法の1つだと考えている。 □ デザインと機能の統合をめざす 事務室は新たに開発したリブ付きPC床版を採用することで、4.35mの階高に3.5mの天井高さを実現しつつ、振動を抑えた高い居住性を生み出した。限られた階高で天井高を確保するため、PC床版とスラブ間の空隙を還気および排煙チャンバーとして活用し、ここに床吹き出し空調を組み合わせることで、内装デザインの特徴であるPC現しのダクトレスな天井が実現している。 一般的な床吹き出し空調方式はエリアごとの風量制御が難しいという課題を有するが、ここでは各階の四隅に配置した機械室からの吹き出しと、外装デザイン要素のひとつである水平庇内をダクトルートとして活用し、スパンごとにVAVを設けた窓側からの吹き出しを併用することで、ペリメーターゾーンの負荷状況に合わせた風量制御を可能としている。また、PC床版の施工上必要なクリアランスに照明器具を設置することで、PC床版のアーチ形状が照明のリフレクターとなり、ライトシェルフによる昼光利用と併せて、明るさ感のある快適な執務空間となっている。自然エネルギーの活用を促す水平庇やライトシェル等の建築的なパッシブ手法で省エネを図り、ZEB Readyを実現した。 □ ワークプレイスをトータルでプロデュースする この本社ではすべての空間をワークプレイスとして捉え、集中・交流・試作・実験・休息といったさまざまな活動モードに対応する場を構築している。人びとが自由に行き来し、活発なコミュニケーションを通して新しいアイデアが生まれる、イノベーション溢れる空間をスムーズに実現するため、建築、ランドスケープのみならず、ミュージアムやショールーム、環境映像の演出計画や、食堂の運営、そのあり方に至るまで、ワークプレイスに必要なすべてのことに設計者として関与した。

物件所在地

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