蒜山そばの館

ビルディングタイプ
レストラン
2
232
日本 岡山県

PROJECT MEMBER

DATA

CREDIT

  • 撮影
    エスエス 秋田広樹
  • 設計
    STUDIO YY
  • 担当者
    田中裕一 / 中本剛志 / 楊沢悦
  • 施工
    森本組
  • 構造設計
    山田憲明構造設計事務所
  • 設備
    ZO設計室

ウッドデザイン賞2023 国際博覧会担当大臣賞受賞作品 <市営店ならではの地域の⽂化や⾵景・伝統・産業・技術・観光をつなぐ店舗> 岡⼭県真庭市の蕎⻨畑が広がる蒜⼭⾼原の麓に位置する、地域の⽅々に親しまれていたそばの館が焼失した。そのそばの館の再建計画である。市営の店舗としてどのようにあるべきかを考え、蕎⻨を⾷べるだけでなく、蕎⻨⽂化や地域の伝統にも触れられる場としたいと考えた。周辺には⼊⺟屋造りの伝統家屋や神社が多く⾒られ、その⼊⺟屋の屋根の下で⼈々が回り踊る⼤宮踊りが無形⽂化財に指定されている。焼失した店舗も⼀部⼊⺟屋の屋根が使われていた。建物は、蒜⼭らしいCLT による現代的な⼊⺟屋と雪の落下を防ぐために勾配を緩く抑え、パノラマの⾵景を切り取る庇がぐるりと取り付く蒜⼭らしさを感じられる構成とした。オープン以降、再建を待ち望んでいた⼈々でにぎわい、⼊⺟屋屋根の下に⼈々が集い、周囲に広がる蒜⼭の⼭々の⾵景を眺めながら蕎⻨を楽しむ、蒜⼭ならではの姿が⾒られるようになった。 <地域の建築様式と技術を繋ぐCLT入母屋造り> ⼊⺟屋の屋根は、真庭市の産業である4枚のCLT パネルが互いにもたれかかり⽀え合う構造とすることで、⼤きな気積にも関わらず、内部に⼩屋組みも柱も無いすっきりとした⼤空間となった。周囲にも残る蒜⼭地域の伝統的な⼊⺟屋造りを、地場の⽊材と地場の現代技術であるCLT で実現した。 <CLT ⼊⺟屋造りの主屋と繊細な下屋が⽣み出す空間のつながり> 積雪⾼さ140cmの多雪区域において、客席部分の梁間9.1m×桁⾏12.74mの⼤屋根をCLTパネル(t=150㎜、5層5プライ)で構成した⼊⺟屋造りで実現している。合計24枚のパネル同⼠は、矧⽬は合板と釘で、継⽬は平鋼とラグスクリューで接合し、⾒え隠れとなるパネル天端で⼀体化している。⼊⺟屋の形態を活かして鉛直荷重に対して主に⾯内⼒で抵抗させることで無柱空間を実現しており、CLTパネルには⾯内せん断⼒と2次的な⾯外曲げモーメントを、棟・降り棟・妻下端の平鋼には圧縮軸⼒を、四周の平鋼には引張軸⼒を負担させている。地震時⽔平⼒の⼤半を厨房側に流すことで客席部分の⼤開⼝を実現することで、繊細な鉄⾻フレームと⽊材の化粧垂⽊のみで構成した緩やかな三次元曲⾯を持つ下屋の縁側とのつながりを⽣み出し、周辺環境とのシームレスな関係をつくっている。 <⼭並に呼応する庇の稜線> 外周の庇部分は背後に連なる蒜⼭三座の⼭並に呼応するように、緩やかに⾼さを変え3次元曲⾯となっており、庇が蒜⼭の横に延びる⼭々の⾵景を切り取り、⼈と⾵景をつなぐ場となっている。建物の⼊⼝には、蒜⼭のシンボルでもある蒜⼭三座をモチーフとした暖簾を、市内の勝⼭に残る染め物技術を使い製作し、家具には真庭の組⼦細⼯を⽤いるなど、地場の⼯芸技術も取り⼊れている。 <夏と冬の2 つの景⾊と縁側> 蒜⼭は避暑地として有名で夏に観光客で賑わうが、冬に訪れてみると冬の雪景⾊もとても美しいことに気が付く。低く抑えた庇と3⽅の⼤きな開⼝から、蒜⼭の夏の⼭並の景⾊だけでなく、冬の⽩銀の世界、それぞれの美しいパノラマの景⾊を楽しめる場となった。

物件所在地

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