橋本のハーフバーン

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    芦澤竜一建築設計事務所
  • 担当者
    芦澤竜一、武曽雅嗣
  • 施工
    西村建築工房
  • 構造設計
    Eureka
  • 撮影
    市川かおり

和歌山県紀ノ川近くに計画した家族3人の住宅である。周囲には豊かな山脈が拡がり、紀ノ川から続く豊かな地形を感じることができる。また周辺には、柿畑が広がり、農家や民家、そして農具などが納められる納屋が点在する穏やかな風景をもつ環境である。 元々柿畑であった敷地に現代の納屋をつくり、そこに住む環境をつくれないかと考えた。納屋はシンプルな構法と形態によって成立している。無駄な設えは一切なく、極めて合理的である。今回の設計でも木造軸組構法による単純な架構と周囲に見られる切妻屋根による単純な形態を採用した。外壁には波板セメント板、木毛セメント板など現代納屋で用いられている素材を用いようとした。 まずは人間と自然と対峙する空間として納屋の半分を内部、半分を外部とした。さらに建築と周辺環境との応答を積極的に行えないかと考えた。この地域は、紀ノ川が過去に氾濫する歴史を持ち、周辺の民家も1階で床上浸水に見舞われたことがある。そこで主要な生活レベルを浸水想定レベルより上げるように考えた。単純に床レベルを持ち上げるのではなく、周辺の山々が持つ豊かな地形を敷地内でも反復するように敷地内外の地形をつくるようにと考えた。玄関から居間、食堂、寝室まで徐々にレベルを変えていく地形である。下部(浸水の可能性があるエリア)には、倉庫や水廻りを計画している。またこの納屋の平面半分を外部空間とし、ここにも地形の隆起を持ち込んだ。半内部、半外部と言えるような曖昧な空間をつくり、居住者が自然と対峙し、考え関わる環境を設定しようとした。この敷地内の地形はまた東西方向に吹く風を半外部空間、更に内部空間内に呼び込むように設計している。そして屋根から落ちる雨水は、敷地内を流れ、敷地内全てに浸透するようにスェールの計画を行い、その他の土部には地域の植物を徐々に植えていく予定である。 住宅内に紀伊の豊かな大地を体現できる小さな環境をつくろうと考えた。をもつ納屋が彼らの今後変化する生活を大らかに受け容れてくれることを期待している。

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