
PROJECT MEMBER
本計画は幹線道路の拡幅工事によって残された三角形の敷地に建つ住宅です。敷地の形状に准じてプランを構成し、角度をもった壁が空間に変化と広がりをもたらすことで、整形な土地では得られなかった豊かな空間が実現しています。建物は多方面から視認される立地にあるため、「正面のない家」あるいは「多くの正面を持つ家」など、見る角度によって異なる表情を見せる外観となっています。 人や車の通行が多い幹線道路側には大きな開口部を設けず、代わりに中庭を通じて採光を確保することで、プライバシーと明るさを両立させました。中庭には柔らかい光を好む紅葉を植え、LDK、寝室、浴室などから四季の移ろいを楽しむことができます。 内部空間では、2階のLDKと3階の子供室が吹き抜けでつながっており、7メートルの梁が架かるダイナミックな空間を生み出しています。階段にはライトグレーのスチール製の段板と内壁を用いることで、各階に使われた足触りの良い杉板の温かみを際立たせ、階段を上り下りするたびに心地よさを再認識できるように工夫しています。 このように、多方向に正面を持つこの家は、初めて訪れる人には少し無愛想に見えるかもしれませんが、その反面住む人にとっては安心して暮らしを築くことのできる、家族のための器となるでしょう。