
PROJECT MEMBER
「cultivating home」 クライアント様からつけていただいたこのお名前は、「上昇していく家」を意味します。住まいとともに、空と地、過去と未来、人と動物と地域が、緩やかに育っていくような住まいを思い描きました。 見上げる空は、晴れの日も雨の日も朝も夜も美しく、屋上庭園からは海も見えます。自然の恵み、流れる雨、育っていくシンボルツリー、中庭に落ちる日向も、一年の中に同じ日は一日足りともありません。 沖縄は明るく開放的なイメージの土地柄に対し、伝統的な民家は石垣や屋敷林に囲まれていて外から見えにくいつくりになっています。自然災害から家を守る知恵です。しかしヒンプンを超えて一歩足を踏み入れると、奥へと広がっていく開放的な空間が現れます。 そんな沖縄の伝統を現代の空間に読み換えた、閉じているようで奥へと繋がっていく連続した空間。その先のリビングダイニングは一見洞窟のような暗い空間ですが、コーナートップライトにより日中は灯りをつけなくても過ごすことができます。このトップライトは光を取り込む他に、湿気を逃す工夫でもあるのです。 室内が取り囲むお住まいの中心には中庭、そして屋上庭園へ続く螺旋階段があります。螺旋階段は、平面だけでなく空へと繋がり、日差しや雨や月の光を日常に取り込んでくれます。真ん中に植える木の成長が、これからの時間を物語ってくれるはずです。 このお住まいはコートハウスですが、花ブロックを通して声や灯り、香りなどが伝わってきます。完全に閉じるのではなく、外の気配をやわらかく感じられる空間。それこそが沖縄らしいと思っています。 命を守る知恵を現代的空間言語に読み替えることが、私たちにできる「継承と挑戦」です。