
補足資料

PROJECT MEMBER
「暮らし」とは職場や学校、住居をはじめとする拠点を転々と回遊する中で成り立ち、またその円環そのものを名指したものである。 生まれ育った地域に家を建てること。周囲との繋がりをもち、これからもここで暮らし、ここで一日や一年を繰り返しすごす。 一日の始点や終点として、人を送り出し、迎え入れる、日ごとに移り変わる「肌理」をもった動線的な空間をイメージした。 様々な肌理が順々に現れる。細かく書籍の並ぶ本棚、滑らかに光を受ける金属質の曲面天井、細かな凹凸をもつ羽目板、見付60mmの木造梁の現し。最大限の奥行のなかで見え掛かりを最小限に割付けることで、モノや光が等価に表情として現れる。モノも光も刻々と移り変わってゆく要素である。 大型開口は冬至日で目覚めの時間帯から床の隅まで日の光が差し込む寸法としている。同時に真空ガラスにより日射熱の最小限化を図る。日照時間の最大化と単位日射熱の最小化により制御の幅を最大化している。調整はロールスクリーンで行う。無段階のアナログな制御は直感的で滑らかで、季節に応じた衣服を選ぶような経験的な動作となる。 この住居は「暮らし」の一延長として気ままに利用されることを目指した。小さな要素の集積が美しく映り、それらを手で扱えるものとしている。それがこの住居においての「肌理」の考えである。
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