
三田市のニュータウンは、豊かな緑と人々の生活に調和のある街であるが、その中でもひと際恵まれたのが本敷地であり、南側の公園の木々の間から北側の森まで、緑に挟まれた本計画地を爽やかな風が通り抜ける。ところが当初建っていた家屋は、折角のこのロケーションを東西で分断しており、新計画では南北に風穴をあけることが、効果的なのは明らかであった。 かくして出来上がった建物は、天井高さ4.5mのLDKを中心とした、風も光も通りける大きなトンネル、あるいは土間の床は通り庭のようでもある。 東西に振り分けられた個室からの動線がここで重なり、住む人が自然と集まる場所になればと思う。 全体を通してミッドセンチュリーをモチーフとした意匠でまとめ、洗練されつつも格式張らない雰囲気は、住む人に憩いの時間を与えるだろう。 ロサンゼルス、あるいはカリフォルニア風の南側のダイナミックな造園は、施主の並々ならぬ熱意によるもので、建築からは水盤の水と白セメント製のベンチを提供し、室内からの連続性もあり、見て良し・居て良しの庭である。 経年により取り囲む木々が育ち、よりプライベート感を強くし、また、古木のオリーブの成長も楽しみである。 外壁材も白華現象を含め経年変化を楽しむことのできるサイディングとした他、黒皮鉄板で仕上げたキッチン、ムラのあるセメント板をそのまま利用した壁、各所に現れる様々なアクセントカラーなど、仕上げ材の見どころも富んでいる。 設計者としては、極限までスリム化した軽量感のある庇・軒先・ガラスの吊り橋、ガラス枠を細くし或いは隠すことで外部との一体感を強めた窓などが、注目して欲しいポイントだ。