
PROJECT MEMBER
日本の植物学の父であり、朝ドラの主人公としても注目を集めた牧野富太郎の出生地、高知県佐川町に位置する道の駅。敷地は元もとヘリポートであった。プロポーザルの要領では、既存舗装を駐車場として活用するために、敷地の西側への建物の配置を求められていた。しかし、与えられた条件を鵜呑みにするのではなく、この場所の持てる魅力を最大件に活かすために、整備する必要があった敷地南側の広場との連携がより強くなり、歩車分離により利用者の安全性を高める効果を鑑み、広場に寄り添うように敷地南側に建物を置き、広場や周囲の自然との連携を強める配置とした。 牧野博士の名前を冠した道の駅に相応しいように、彼が愛した佐川町の魅力や自然の素晴らしさを体験できるように、佐川の文化、歴史、自然、産業が共演する構成とした。牧野富太郎氏の生家がある上町の歴史的な切妻屋根の町並みと、山々の折り重なる美しい風景に心を揺さぶられ、切妻屋根が並ぶように建物を配置した。ふたつの切妻屋根を、世界初となる木造カステン構造による緩かにたわんだ屋根が、四季折々の表情を見せる背後の斜面の花畑を切り取り、来訪者がいちばん初めに目にする風景としてお出迎えをする。地質の町としても有名な佐川町から派生し、おもてなしの意味を込めた「ごちそう佐川」という運営コンセプトに応える「ご地層の帯」と呼ぶ版築壁を、建物の内外に跨るように配置した。ご地層の帯には観光案内の掲示、特産品の販売コーナーの設置、化石を埋めるなど、佐川町の魅力をたっぷり体験できる工夫を施した。「ご地層の帯」は佐川町の産業振興ならびに広報・PRの場として機能するだけでなく、人々の活動を屋外へと導き、敷地いっぱいに賑わいを拡げる役割を果たす。 さらに、建物は雁行させることで、どこにいても外への視線が抜け、周囲の雄大な自然を身近に感じることができる。入口から空間両端を視認できないため、利用者は奥へ奥へと誘われ、芝生広場へ辿り着く。そこは佐川の美しい山々に囲まれた居心地の良い広場で、子供たちが思い思いに走り回り、自然と触れ合うことができる。活動が建物内で完結するのではなく、自然と建築がお互いに寄り添い、共存する関係を生む、佐川町の自然を愛した牧野さんらしい道の駅となった。