
補足資料







PROJECT MEMBER
◼️工場団地の長屋オフィス 前面道路の拡幅にともなう工場事務所の建替である。場所は、50年以上続く工場団地の一区画で、周囲は工場の建屋や資材に囲まれている。 まず、この景観に木造を持ち込みたいと思った。道路が拡幅されて見通しが良くなれば、無機質な街並みを変える契機になると考えた。また、今回解体する旧事務所は、職人の宿泊所に使われたことがある。今も残る「長屋」のような生活感、建物との距離の近さを現在工場で働く人々にも感じたことから、この感覚を継承する「道具立」を建築の構成や各所部品、材料選択に組み込むことで、“簡易なメンテナンスは自分たちでする”といった製作現場独自の持続可能性を担保できるのではないかとも考えた。 構成としてはまず、1階資材置場の搬出入に必要な高さ3m、間口13mを無柱で飛ばした鉄骨造の台座に木造空間を載せる原型を考えた。 結果的には、13mスパンの梁を上階からブレースで吊る必要もあって、4周を鉄骨造、2〜3階の内部を木造とした。鉄骨と木の接合は、水平梁をパネリード鋼の長ビスで縫い合せて実現している。また、設備が集中する東面では構面をブレースごと700㎜外にずらして外壁との間に足場スペースを設けた。 内部空間は、「オフィスと生活空間を明確に区分したい」との要望もあり、2階は水平方向に長いひと繋がりのオフィス空間としたのに対して3階は、休憩室に繋がる路地状の空間沿に生活空間が連なる「長屋」を意識した構成とした。加えて前面道路に面した北側のファサードには、木質化した内部を見通す大開口を設けた。 各所部品は、建築金物を階段の支持材に転用したり、電設資材を組合せて照明器具とするなど、汎用品を用いることで、増設やメンテナンスをイメージし易くした。また、フックでヘルメットや工具を吊ったり、ベランダを緑化するなど、使い方や場所に合せて手摺や衝立の幕板に用いる鋼製面材の種類も変えた。 材料選択でもガルバリウム鋼板、サイディングボードを始め、鉄骨の防錆塗料まで汎用性を優先した。 この工場を運営するのは巨大煙突のメンテナンスや解体を請負う会社で、工場では作業用のゴンドラを製作している。巨大煙突における高所作業は「チームワーク」が重要と聞いた。その根底となる組織風土が建築の持続を通して育つとすれば、「道具立」となることも工場事務所のひとつの在り方ではないかと考えた。