NISHIJI PROJECT

ビルディングタイプ
その他住宅
2
93
日本 千葉県

PROJECT MEMBER

DATA

CREDIT

  • 撮影
    Vincent Hecht
  • 設計
    KOMPAS
  • 施工
    青木工務店
  • 構造設計
    yasuyasuhirokaneda STRUCTURE / 桑子建築設計事務所
  • 設備設計
    MOCHIDA建築設備設計事務所 / EOS plus
  • 環境
    OMソーラー環境設計ラボ / スタジオノラ
  • 外構
    N-tree
  • 照明
    灯工舎
  • カーテン
    Studio Akane Moriyama

高台の山野浅間神社の松林を背に、昔ながらの石塀が残る西船橋の千葉街道沿い。不動産業を営みながらアートコレクターでもある施主による、代々続く実家の敷地内に自宅および事務所兼ギャラリーを建てる計画です。北側最奥の高台に母屋(実家)が構えて道路側は古い蔵と駐車場のある雑多な庭だったため、まずは事業と二世帯それぞれの暮らしが共存できるよう、母屋との高低差をつなぐスロープ状の庭や共用動線などの敷地環境を整えました。新しい建物の一階中央には駐車場がおさまり、庭に開けた静かな北側には住宅が配され、事業スペースをまとめた道路側は街と繋がる建物の顔となります。地元地域への文化的貢献をしたい、わざわざ遠くから人が訪れる存在にしたい、郊外の環境を活かした建物にしたいという施主の志を受け、ギャラリー付き住宅というよりは住宅付き美術館のような、さまざまな使い方に対応できる公共性や汎用性を兼ね備えた魅力的な建築を目指しました。 敷地に元あった瓦屋根の蔵の記憶を継承し、塩害に強い黒いぶし瓦の外装で所蔵品や暮らしを守るに相応しい堅牢な佇まいとする一方で、神社の松林も茂る真北方向へと開く鋸屋根を並べることで、アート空間に相応しい北側自然光を最大限有効に取り込みました。外装の特注瓦は、設置する向きを変えることで同じ形状で閉じた外装面と開口部のルーバーの両方を構成できる意匠になっており、南面では直射日光を遮って国道からのプライバシーを守りながらもルーバーを通した木漏れ日のような光を取り入れます。鋸屋根を冠して雁行形に連なる2・3階の木造躯体は、敷地に沿った石垣のような1階洗い出しコンクリート躯体に被さるように重なり、積層する構造グリッドのねじれに階高の段階的な変化が掛け合わされて、庇やテラスなどの様々な立体的な中間領域が建物全体に散りばめられます。 三層のギャラリー・事務所を内包して国道に対して堂々とした存在感を示す建物ボリュームは、法規も考慮して北側に向かって高さを落としながら、徐々に庭へと馴染む住宅スケールへと変遷していきます。それぞれ高さと勾配が異なる7つの鋸屋根は、開口部の柱梁によるフィーレンディールトラスが大スパンを可能にし、金属屋根を反射板として内部空間の用途に応じた自然光を取り込みます。急勾配の南側3つはトップライトとして3階ギャラリーを柔らかな間接光で満たし、緩勾配の北側3つは窓として住空間にアーティストのアトリエのような安定した光環境を与えて空や庭への眺望を開きます。中央の外部屋根が覆う風の抜ける2階多目的テラスは、ギャラリーの展示・イベントスペースや子供の遊び場などの様々な使い方を許容し、住宅リビングと事務所を結ぶ動線も兼ねながら公私のほどよい距離を保っています。 構造形式や採光の変遷に伴って、洞窟のような下階から光溢れる上階へと内部空間の質が移り変わり、それが各ギャラリー空間をも特色付けます。現代アートから骨董品まで多岐にわたる施主のコレクションや将来的なフレキシブルな使い方を考慮して、三種のギャラリー・オフィス空間に加えて踊り場や廊下にも展示を想定し、訪問者の動線に沿って様々な場所や余白が用意されました。そこに立体的な半屋外空間や外構ランドスケープが絡みあい、光や素材の切り替わりと相まって、回遊性溢れるダイナミックな空間シークエンスが展開していきます。 この瓦の鎧と鋸屋根が織りなす小さな街並みは、展示品・所蔵品と居住者・訪問者を心地よく共存させる寛容な場として、この土地に新たな時代を刻んでいきます。嬉しいことに、あくまでプライベートコレクション用ギャラリーとして始まった当初の想定を越えて、より広くへの公開も意図してここを拠点にした新たなアートビジネスが始まるに至りました。小さな美術館に暮らすような楽しく豊かな日々を支えると共に、アート・文化の拠点として世界へも発信していけるような存在になることを期待しています。

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物件所在地

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