碧の望楼

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 撮影
    野村和慎
  • 設計
    株式会社TENK/テンキュウカズノリ設計室
  • 担当者
    天久和則 / 道廣央我
  • 施工
    ササハラ鉄骨
  • 構造設計
    KURA構造設計

「碧の望楼」 東に太平洋の光、西に丘陵の静けさ。山と海のはざまにあるこの地は「双海」と呼ばれる。かつてより人々はこの複雑な地形と向き合い暮らしを紡いできた。漁港の佇まい穏やかな海岸線にはどこか昭和の面影が残り、遠い記憶を呼び覚ますような懐かしさがある。喧騒から距離を置き終の住処としてこの地に身を移した。壮大な海原と包み込むような山並みに囲まれた高台にそっと身を預けるように建っている。ほとんどの生活は一階で完結し、二階には小さな書斎と碧く広がる水平線を望む静かな居場所がある。一日の大半を過ごす一階は庭と地面に寄り添いながら水平に広がり、二階には書斎を設け、静かな時間を海と共に過ごせるようにした。玄関から続く土間は、縦横に広がる余白として住まいの中心を成している。そこでは素材と光が重なり合い、形の輪郭が溶け合うような静謐で奥行きある空間が生まれている。スケールや素材の違いは空間の中に静かなリズムを与え、それらをつなぐ秩序が住まいにゆるやかな芯を通している。 海に向かう東側には開かれた大きな空間を設け、風と光とともに海とつながる。西の山側にはひそやかに眠れる寝室を配し、静かに内へと帰っていくような導線を用意した。建物は単に風景に寄り添うのではなく、この土地と共に呼吸しながら人と自然のあいだに小さな橋を架けようとしている。暮らしそのものが風景となり、風景がまた暮らしに染み込んでいく。そんな豊かさの記憶を刻む住まいでありたいと願っている。 この家に「碧の望楼」と名を付けた。 この地の碧い海と空、碧緑の山々の境界にただずみ、 日々移ろう光と風を感じ、 心の波もまた穏やかに鎮まっていく場所。 時に海を見下ろし、 時に心を澄ませ人生の後半を見晴らす「望楼」のように。

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