経年深化の家

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 撮影
    平林 克己
  • 設計
    遠西 雄大
  • 担当者
    遠西 雄大
  • 施工
    株式会社坂場工務店
  • 構造設計
    有限会社都市環境計画コンサルタント(アドバイサー)

本計画は、周辺に畑や栗林が広がる台地先端の緩やかな斜面地に建つ、木造平屋の住宅である。自然豊かな環境に調和する建築を目指し、景観形成や環境負荷低減、そして地域の記憶の継承に配慮して設計された。 設計の主題は「経年深化する建築」。焼杉を用いた外壁は、炭化層が徐々に剥がれ、内側の杉が露出していくことで、時間の経過を刻みながら風景に馴染んでいく。また、鉄骨丸柱には常温亜鉛めっき塗装を施し、耐候性とともに色調の変化も楽しめる素材選定とした。外部の木部は無塗装とし、風雨に晒されていく中で徐々にシルバーグレーへと変化する、素材本来の時間性を尊重している。 敷地は埋蔵文化財包括地域に指定されており、過度な造成を避け、既存地形に沿った設計とすることで、土地の記憶と共存する姿勢を示した。基礎レベルは法上近辺に設定し、土の掘削量を抑えるとともに、施工時の環境負荷軽減にもつながっている。 建物全体を一体の屋根で覆う計画とし、農作物置き場や回廊といった半屋外空間を包含することで、大らかで開放的な構成とした。外部空間が緩衝帯となり、生活の余白や近隣との関係性を柔らかくつなげる役割を果たしている。平屋形式としたことで、周囲の自然環境や隣接する両親の住まいへの日照・眺望への影響を最小限に抑えている。 内部空間では、南面の大開口を通して冬季の日射熱を取得し、深い軒により夏季の直射日光を遮蔽するなど、パッシブデザインの原則を積極的に取り入れた。加えて、Ua値0.31W/㎡K、一次エネルギー消費量0.76とする高断熱・高気密仕様とし、BELS評価☆☆☆☆☆を取得するなど、環境性能にも優れた住宅となっている。 素材としては、無垢オークの床、松の胴縁材を用いた天井など、手触りや視覚的な質感に優れたものを選定。特に天井材には、下地材として流通する部材をあえて露出させることで、素材の新たな価値を引き出している。外壁材の焼杉も既製品ではなく、地元の大工が焼いたものを使用し、地域技術の継承と地産地消にも貢献した。 木材の積極的な使用は、CO2の長期固定=カーボンストックの観点からも意義が大きく、脱炭素社会への具体的な取り組みといえる。単に自然素材を使うのではなく、その時間的変化と意味性を空間に織り込むことで、持続可能性と文化性を両立させた建築を志向した。 屋外・半屋外空間の重層的な構成、素材の時間的深まり、敷地との関係性を丁寧に読み解いた建ち方など、本計画は、地域環境・景観・資源循環への応答を軸に、現代の住宅が担うべき価値を問い直す提案となっている。

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