鮨 幸仁

ビルディングタイプ
その他商業施設

DATA

CREDIT

  • 撮影
    Toshihisa Ishii / Blitz Studio
  • 設計
    STUDIO MOUN
  • 施工
    (株)安恒組

福岡・平尾にある鮨店の設計である。 店主の温厚な人柄や、手仕事によって素材の旨みを引き出す職人としての姿勢を体現するため、手触りのある素材を活かしながら空間を構成した。 まず、客席を最大数確保するために、つけ場と一体となった扇形のカウンターを店の中央に計画。その形状に沿うように曲線を描く壁で客席とエントランスとを仕切ることで、外部の気配や客の出入りを気にせずに落ち着いて鮨を味わえる空間をつくり上げた。 オリジナルの手漉き和紙を貼ったカウンターバックの壁面には緩やかなカーブをつけており、同様の仕上げを施したエントランスの曲面壁と対になって客席をやさしく包み込む。 伸びやかな模様が連続する和紙のデザインは、紙を漉く際に胡粉を流すことで、水が流れる様を大胆に表現したものだ。その上にあえて散らした水滴の跡が、静かな迫力を感じさせる。 店主の舞台となるカウンターの天板は、銀杏とパドゥク材を特注の刃物で削り出し、端部まで滑らかに仕上げた。銀杏は歩留まり良く切り出すことで、端材を鮨板やまな板に活用している。 カウンターに合わせてデザインした三本脚のイスは、地元で採れたヒノキの無垢材で製作。木目の見え方を考慮して部材を組み合わせており、曲げずに削り出した背もたれが、その印象を際立たせる。脚と幕板は二重ほぞで接ぎ合わせ、長年の使用にも耐え得る高い強度と耐久性を確保した。 本計画では、インテリアデザインに加えて、鮨板や看板、名刺、お礼状などの店舗(ブランド)を表現・伝達するためのツールのディレクションまで一貫して行うことで、店主の持つ世界観や空間体験を拡張することを試みた。多様な作家と協業し、自然素材本来の特性や余白を活かして丁寧につくり上げた空間やツールは、時間と共に表情を変え、無二の空気感を醸成していく。

物件所在地

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