
補足資料


PROJECT MEMBER
「余白」 敷地は兵庫県神戸市内。南側に交通量の多い幹線道路が通る。 街路樹と店舗の軒先が単調に連続している街並みの中に住宅を計画するにあたり、軒のあり方、道路と歩道との関係性を再考し、密度の高い街の中で、行き交う人達に圧迫感を与ない空気のような居場所ができないかと考えた。 具体的にはまず、ボリュームを歩道いっぱいまで建築するのではなく、軒先のみを隣地と揃えながら、セットバックさせた。1階RC造、2、3階木造の混構造3階建てとし、1階はボリュームを敷地中央に凝縮させることで、全体の浮遊感を演出し、上部もボリューム操作により圧迫感を軽減させた。軒は奥行2,275mmのキャンチレバーとし、見付は215mmに抑え、軽やかな表現としている。さらに軒上と軒下には植栽スペースを設け、立体的な庭とすることで、街の中にぽっかりとした「余白」を生み出し、喧騒を受け止めるような懐の深い設えとした。 1階の外部空間は、駐車スペースと機能を限定しないフレキシブルなスペース、内部空間はエントランスと収納、2階にはLDKと水廻り、3階に家族の居室という構成にしているが、 内部も「余白」の延長として捉え、強固な壁で仕切るのではなく、吹抜や枝付き丸柱等が弱い領域性のみを生み、その中に家具や浴槽が置かれ、初めて空間に機能性が見えてくるような空間作りを行った。 2階の南側、東側に大きく開口をとり、光や風を内部に十分取り入れながらも、「余白」が街との緩衝帯となり、両者を緩やかに関係づける。敷地は準防火地域内であるため、内外の境界には燃え代を含む化粧柱を配しているが、その比較的広い柱幅を利用し、サッシの枠、縦框が内部からは見えない納まりとした。さらに耐力壁には鉄筋ブレースを採用、内装はモルタル系の左官仕上げとする等、内外を差異化させる要素を可能な限り削ぎ落し、街、余白、内部がシームレスな関係となることを目指した。 合理的で無駄がなく、どこか窮屈ささえも感じる街の中の限られた敷地面積の中で、「余白」により家はどこまでも自由でおおらかな場所となり、自他共にホッとする安心感を与えてくれる。