
補足資料




PROJECT MEMBER
築50年が経ったゴルフ場クラブハウスへのエントランスゲートの増築と既存建物の全面改修のプロジェクト。女性ゴルファーや若年層など幅広い世代が利用できるようにイメージを一新することや、DX化の推進などコロナ禍を経て変化しつつある昨今のゴルフ業界の需要に合わせた改修が求められました。 まず、既存建物を囲うように、利用者を迎え入れるゲートの役割や車寄せの庇を兼ねたエントランスゲートを作りました。分厚いコンクリートの壁から押し出したような庇の形状にすることで、奥行き4mの庇を支柱を立てずに片持ちで実現しています。壁の端部を丸く仕上げることで、やわらかな曲線でつながった一体成型の大きな土の塊を思わせるデザインに仕上げ、車で訪れるゴルファーに高揚感を与えます。 既存建物の外壁にはルーバーを取り付けることで、露出した設備配管や設備機器を隠しながら、エントランスゲート、ルーバー、既存建物という3つのレイヤーを作ることで、コンクリートの構造体だけの武骨な印象の建物に、重ね着をするように柔らかさをまとった外観としました。既存建物の内部は、耐震補強工事によって太くなった柱が視界や導線の邪魔になっていましたが、柱をつなぎながら端部に丸みを持たせることで、各スペースをゆるやかに区切る一体成型の壁にまとめ、エントランスゲートと呼応したデザインとしました。 エントランスホールに入ると、円形の折り上げ柔らかさをまとわせる天井を持つチェックインスペースが、来場者を温かく迎え入れます。間接照明が映える木製ルーバーを背景に、カウンターはアースカラーの左官仕上げで、素材感のある上質な雰囲気を演出しました。ロビーは、曲面で仕上げた柱のあるショップスペースが両脇に広がり、中央にはゆったりとしたソファを配置。ゴルフコースを連想させるグリーンのカーペットが、コースへ向かう動線を自然に導きます。 2階のレストランは、ゴルフコースの眺望を楽しめる窓際エリアと、柱をルーバー天井でつないだ落ち着いた雰囲気を作り出した中央エリアの2種類のスペースを設けました。三方向に開かれた広く明るい空間を活かし、ラウンジのような居心地の良い空間を目指しています。 男子浴室は陰影が美しいタイルを使い、窓の高さに合わせた壁面間接照明を加えることで、自然光と人工照明が調和したリラックス感のある空間を作り上げました。 限定した素材とシンプルなディテールで壁と柱を一体化しながら柔らかさをつくるデザインにより、50年の歴史を持つゴルフ場クラブハウスを現代のニーズに合わせて再生し、ゴルフ場全体の価値を高めることを目指しました。(久保秀朗+都島有美)