
PROJECT MEMBER
およそ1,300年前、役小角によって開かれたとされる霊峰・大峯山へと続く温泉郷・洞川温泉。 標高約820mに位置し、日本独自の山岳信仰・修験道の聖地である大峯山で修業を行う行者さん(山伏)の登山基地として古くから栄え、旅館・民宿や、和薬の元祖とされる大和の名薬・陀羅尼助丸を扱う商店などが軒を連ねている。それらは講と呼ばれる大勢の行者さんの団体が一度に館内・店内に上がることができるよう、各々が通りに対して大きく開け放つことのできる縁側を持った造りとなっており、この洞川温泉特有の造りがまちに賑わいや独特の風情を与えている。そしてそれはまちの人同士のコミュニケーションを容易にし、また、通りを歩く子どもたちをまち全体で見守る役割としても機能しているように思う。 当然の解ではあるが、同ブルワリーも通りに対して大きく開く計画とし、物理的にも思考的にもまちの一部になればという思いを込めた。内装には陀羅尼助丸をモチーフとした特注タイルや、ビールと同じく発酵することによって生成される柿渋を用いた和紙を採用し、また、改装前に喫茶店を営んでいたこの建物はいわゆる歴史のある建築物や古民家という訳ではないが、外観は必要以上に手を加えず、長い年月をかけて慣れ親しまれた風景をこれから先も引き継いでいってほしいと考えた。 オープン後に訪れた際、観光客だけではなく、周辺の旅館などで働く人同士の仕事後のコミュニケーションの場ともなっていると聞き、少しずつまちの一部となっているように感じた。
