PROJECT MEMBER
敷地は、京都の閑静な住宅地、京都の景観が時代と共に薄れていく中、この地域もところどころにその断片を残すだけである。オールジャパンインターナショナルスタイル(?)のアパートと住宅が確実に京都市民の中にも浸透してきているようだ。街並み景観保護運動が一際盛んなこの都市で、表層的な町並みの保存だけに留まるのではなく、継承していかなければならない空間解釈による京都の都市型住宅を考察したい。 先斗町や祇園界隈に見られる細く長い路地空間、あるいは表通りから一歩下がった<間>や外部と内部に挟まれた中間領域に、この都市の住人の美意識や精神が隠れているはずである。それを模索し住宅に取り込むことで、京都という都市と住宅をつなげたい。また、RC壁式構造と木造軸組構造を併用しているが、この住宅において空間構成を構造表現に結びつけることは、アトリエのある特殊な性質の住宅の表現につなげるためである。特質を表現するということは、住み手と住宅をつなげるからにほかならない。つまり住宅を都市と住み手をつなげる接点として考えたい。 この住宅の空間展開の中心は、東西南北の軸上に載った長方形の敷地に西側道路から敷地中央に向け用意した幅1.2m、奥行12mのアプローチとその先の中庭、そしてそこに広がるルーフデッキにある。すべての居室はこの中庭とルーフデッキに向かって開くように計画しており、単純で明快な中間領域を共有する。ルーフデッキの天井にあけられたスカホールが2階へと導く。空を丸く切り取るスカイホールはこの住宅のシンボルだが、ルーフデッキを明るくするだけではなく、梅雨には雨を、夏には強い日射しを、春と秋には緑とオレンジ色の風を、そして冬には雪さえもルーフデッキに届ける。 2階では、ルーフデッキを挟んでファミリースペースとプライベートスペースが向かい合う形で独立する。どちらのスペースも冬至の日射しの角度で天井の勾配を決め、夏には日射しを抑え、冬には部屋の奥まで日射しが届くように計画している。 ここの単位を独立させ、単純で明快な中間領域を共有させることでひとつの住宅を成立させる。中間領域は空間をあくまでも間接的に連続させ、季節の色を運び込む柔らかな関係をつくり出す。光と風と空と雲、そして雨と雪。季節を楽しむこの都市に、中間領域を通してより能動的に季節を取り込む都市型住宅をここに提案する。継承していかなければならない空間解釈として・・・。