




本計画は、1984年に建てられたRC住宅の改修である。当時の設計は、都心の喧騒から距離を取ることが意図されていて窓が小さく、室内へと差し込む光が限られていた。私たちはその状況を肯定的に捉えることから設計を始めることにした。儚いからこそ、その微細な変化に気付き、楽しむことができる。 室内に入ってくる光は、壁や床、家具などのものに反射して私たちの眼に届く。そこで空間を構成するものの反射率、つまり「艶」の在り方をデザインすることにした。 質感があり影を生む艶消しの左官と3部艶のオイルステイン、半艶の塩ビタイル、少し錆びた既存の真鍮の取手と軽くやすった新規の真鍮の見切り、ステンレスの壁面とキッチン、毛の流れの向きによって光の反射が異なるベルベットと、ステンレスの粉を吹きつけたテキスタイルのカーテンなど、空間のなかで「艶」にすこしずつ変化を与えた。 照明計画にも気を配り、あえて色温度を統一せずに異なるものを選定した。光源の形状についても面、線、点のそれぞれが光の広がりに変化を与えている。 儚いけれど確かに満たされた光を楽しむことができる空間ができあがった。
3

