
PROJECT MEMBER
敷地は日光市内に位置し、周囲には男体山をはじめとする山々が連なる。本計画は、夫婦と子ども3人が暮らすための住宅である。日々の慌ただしさの中にあって心安らぐひとときを過ごせる、「隠れ場」のような住まいを施主は望んだ。 そこで、住宅でありながらも自然の一部としてそこに在り続けてきた岩場のような佇まいを目指した。 周囲に住宅が近接していることから、正対を避けるために建物全体を敷地に対して斜めに配置した。渦巻き状の平面に沿って雁行させた大小さまざまな立方体のボリュームが、岩を想起させる。その間に生まれた空間は、先を見通せない平面構成により、洞窟を思わせる構成となっている。ボリュームは3600角の大きなものから900角の小さなものまで多様で、居室や水回り、収納などを納める。洞窟のような空間はリビングやダイニング、廊下といった役割を担い、幅や高さを変化させながらひとつながりに続いていく。 中心に向かうにつれて天井は高くなり、ダイニングを経てリビングへと至る。一方、外周に近づくにつれて天井は低くなり、ヒューマンスケールを強調したより私的な空間へと移行していく。そこに隣接する各個室は二層構成とし、廊下から入るとまず大きな空間が広がり、その奥にもうひとつ小さな空間を設けた。家族それぞれが洞窟を開拓するように自由に使える場とし、暮らしの変化に柔軟に対応できるよう計画している。 開口部は大きく設けず、ボリュームの隙間に小窓を点在させることで、プライバシーを確保しつつ採光を取り入れた。小窓は空や庭木を切り取り、時間帯によって差し込む光の角度を変化させることで、室内にいながら外の様子や時間の移ろいを感じさせる。リビングにたどり着いた先では、岩が崩れかけたような様相を見せる空間が現れ、多くの光を取り込む開放的な場となっている。 木造かつ複数のボリュームが連なる本作では、揺れに伴う屋根の水おさまりが懸念事項であった。屋根に超速硬化ウレタン防水を採用することで、形状の自由度と防水性能を両立し、複雑な屋根構成を実現している。また、樋は箱樋を採用し、ウレタン防水に細骨材を混ぜることで外壁のジョリパットと一体化して見え、大きな一つの岩の塊のような表情をつくりだしている。 この住処が家族を包み込み、変化していく暮らしに寄り添う拠点となることを願っている。
