Ángel nini(アンヘルニニ)

ビルディングタイプ
その他商業施設

DATA

CREDIT

  • 撮影
    YUICHI TATSUKAWA
  • 設計
    伊藤憲吾建築設計事務所
  • 担当者
    伊藤憲吾 / 高田明日香 / 森悟
  • 施工
    株式会社 平野工務店
  • 構造設計
    きいぷらん
  • 協働設計
    atelier arks

 自然光で撮影のできる写真スタジオである。準延焼防止建築物の木造ビルとして計画している。直射日光を制限するために斜めにしたトップライトは柔らかい光量を最大限に獲得している。四季や天候により変わる光量を写真作品として受け入れることで、この地域のこの建築でしか撮れない写真を生み出すことに繋がっている。  敷地は大分市と別府市の中間に位置する西大分の「かんたん港園」に近接した立地である。観光の玄関口として開発され人気のウォーターフロントである。事業主は新しい写真の在り方を模索していた。誰でもがスマートフォンで写真を撮り記憶と記録を残すようになった。その思い出をより豊かな物として残す為の建築を考えていた。写真スタジオは従来、照明によるライティングでコントロールし、一定の写真を撮るための建築である。自然光による写真スタジオはそれに反しているが、ここでしか撮れない写真こそが次に残す写真作品となると考えて、その為の建築に挑んだ。北側道路の敷地は安定した北側採光を得る為、そして将来の採光の変化を避ける為である。次の時代に繋げる建築は木造ビルとして環境負荷軽減建築を目指した。撮影の依頼は国内外からあり、国際観光都市大分県を訪れる際に撮影に訪れてくれる場所となっている。地域に寄与する建築となった。  写真と建築:四季や天候で移ろう自然光で撮影することを可能とし、その時だけの繊細な写真作品を生む建築となっている。写真を撮ることが日常化し、写真文化は改めて発展していると言える。地域性のある光量を建築に取り込むことで写真と建築が密実な関係としてあり続ける。  発展する地域への都市木造:港園として発展する地域は今後の変化が期待される。環境負荷軽減のための木造ビルの可能性を地域に示唆し、今後の都市の在り方の一つとして示している。  明快な避難経路と拡幅する自然光:準防火地域に木造建築を造るために準延焼防止建築(令和元年改正)としている。木造を推進するための法改正は開口部を制限することで木造の自由度を得ることになった。火災や災害時の避難を優先するために階段室は道路に面して設け、階段吹抜を自然光の拡張空間として捉えることで、安全性と機能性を両立した木造建築の姿とすることができた。  COP26の際に人間の活動が環境にダメージを与えていることが明言化され、世界では急速に環境負荷を軽減するための取り組みが進んでいる。木材の生産サイクルがCO2の減少に寄与することから、炭素の固定化として木造建築が世界的に求められている。本建築も当初は鉄骨造を想定されていたが、事業主に説明し、木造ビルへすることを共感頂いた。木造ビルという新しいカテゴリーは、過去の焼き直しから脱却が必要であると考えた。機能面から屋根と壁の中間のようなガラス面の勾配が生まれた。正面から見るとカーテンウォールのように見え、角度によっては屋根のように見える。木造建築に屋根型の記憶が刻まれていることで、木造建築としての認識が生まれる。質感としての木材の表しをせずとも木造建築であることが認識できる建築である。  木造建築の高さに関する法改正(最高高さ16mに緩和)も近々行われるが、本建築においては軒高さ9mを越えることで構造適判となる可能性があり、事業主の予定した期間に建設が間に合わないことが想定された。1階の床部分を一部GLより下げて断面計画をしている。2階スタジオ部分が天井高さを要求されていたこともあっての対応である。ハザードマップにより床下浸水などの検証を行ったが津波や高潮の影響がないことが確認された。ハザードマップ通りに災害が起きていることを専門家より聞いていたことも後押しとなった。3階は事業主の為の小屋裏のアトリエ空間を望まれていたので、法規制から生まれる軒高さの制限と併せて立体的空間活用となった。構造は在来構造としている。特殊解としないこと地場産業での施工を可能としている。環境負荷軽減のために求められる木造化は、誰しもが取り組みやすい状況とすることで目的に近付けると考えている。 グッドデザイン賞2024 受賞 ウッドデザイン賞2024 受賞

物件所在地

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