秋保 もりそばSHIN − 軒がつなぐ、渓谷に開く庵

ビルディングタイプ
レストラン
5
324
日本 宮城県

補足資料

平面図
図面
南北断面図
図面
磊々狭側から敷地を見上げる
その他
軸組模型
模型写真
軸組模型
模型写真

DATA

CREDIT

  • 撮影
    窪田 隼人
  • 設計
    Ginga architects
  • 担当者
    武田 幸司
  • 施工
    T-PLAN
  • 構造設計
    皆本建築工房
  • ランドスケープデザイン
    千明風景設計事務所

場所と建ち方 仙台市西部、車で40分ほど走らせた先にある観光地・秋保温泉街。名取川の清流と磊々狭の奇岩渓谷に抱かれ、四季折々に豊かな表情を見せる緑に包まれた風光明媚な地に敷地はある。敷地の南側には道路が通り、北側には名取川へ切り立つ崖が迫る。西側にも崖と沢、雑木の森が広がり、建築可能な平場は東側の1/3に限られていた。そのため、崖に影響を与えない範囲で計画された建物は、南北に細長い20坪程度のボリュームをもつ。 お店と週末住宅の二重性 クライアントは、秋保の自然に寄り添いながらこれまでにない蕎麦を提供する15席ほどの小さな店を望んでいた。同時に、自然と共に過ごすホテルライクな週末住宅の実現も求められた。そこで建物は「店舗6:住宅4」の比率で分節され、南の道路側には街に開くように店舗を、北の崖側には渓谷に向かって静かに開く住宅を配置した。 さらに、内部と外部を柔らかくつなぐ庇やテラスを南北に備え、内部空間を視覚的にも体験的にも拡張した。ファサードは西側にコの字に開くように構成し、ハイサイドライトを設け、内部のどこからでも緑を感じられるよう計画した。店舗と住宅の間仕切り上部もガラス開口とし、両者の気配が緩やかに響き合うことで、限られた20坪の空間に奥行きを与えている。 緑を映す落ち着いた空間 店舗部分は、従来の蕎麦店の形式から離れ、カフェやバーのような落ち着いた雰囲気を求められた。西側にはベンチとテーブル席を、東側にはオープンキッチンとカウンターを配置し、客が調理のリズムや蕎麦の「食べごろ」を間近に感じられる構成とした。仕上げは杉板を深いワインレッドに染め、壁と天井、さらには軒天や外壁にまで連続させている。これにより、内外の境界が曖昧になり、外部の風景そのものが空間に取り込まれる。 非日常的な時間の場 住宅部分は、名取川と磊々狭の断崖を眼前に望む非日常的な空間である。崖から浮かせるように設けたテラスとリビング、ベッドスペースが連続し、3m先に切り立つ崖とその先の渓谷の風景を日常の延長に引き込む。浴室にも大きな窓を設け、湯に浸かりながら四季の移ろいを体感できる。ハイサイドライトからは木陰越しに広がる空が切り取られ、小さな住まいながらも豊かな時間を生み出している。 緑と風景を味わう建築 「もりそばSHIN」は、名取川の清流と磊々狭の奇岩渓谷、そして秋保の深い緑という唯一無二のランドスケープを取り込みながら、小さな建築の中に「お店」と「住まい」という二重性を同居させた。店舗は地域に開かれ、住宅は自然に寄り添う。その両者をつなぐのは、限られた面積を超えて広がる風景との交感である。ここでは蕎麦を味わうこと、そして自然と共に時間を過ごすことが同じ地平に結びつけられている。 この建築は、秋保という地のもつ風光明媚さを余すところなく受け止めながら、日常と非日常を往還する特別な場を生み出したのである。

物件所在地

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