
PROJECT MEMBER
本計画「umieru」は、三つの目的を内包した空き家再生の実践である。 第一に、福祉車両の乗り入れができない立地条件から、やむを得ず住み慣れた家を離れざるをえなくなったおじいさんが、一時帰宅できる「帰る家」を残すこと。日常的な居住は困難であっても、記憶のある場所に戻る時間を確保することを重要な設計条件とした。 第二に、設計者が継続的に取り組んできた空き家活用を、体験として伝える展示場的役割である。建物を二つのユニット(黒基調/白基調)に分け、1階は新築に近い仕上げ、2階は古民家らしさを残す構成とすることで、四つの異なるリノベーションの在り方を一度に見学できる空間とした。 第三に、限界集落となった地域を知ってもらい、訪れる人を増やすことである。宿泊という行為を通じて、別のかたちで集落に灯りがともる、そのきっかけとなる建築を目指した。 本計画では、建物所有者から建物を借り受け、設計者自身が運営主体として関わっている。設計と運営を切り離さず、使われ続けるなかで空間がどのように受け取られ、維持されていくかを捉えるためである。 また運営においては、過去に設計を担当した旅館の運営者によるサポートや、地域のお母さんたちが清掃などで関わっている。設計・運営を特定の主体に閉じず、建物を媒介として人の関係が編み直されていくことも、本計画の重要な要素である。
