
本住宅は北と東の2方向を3mの擁壁に、南をブロック塀に囲まれた人工造成地が敷地であり、そのフラットな地盤にRC壁を立ち上げ、在来木造住宅が乗る高床形式を採用している。それは周辺地域の「建ち方」が人工地盤によって駐車スペースと居住エリアを上下分離していることにも起因する。さらに1階のピロティ空間をベタ基礎と土間コンで打ち固めて所々に坪庭を配し、ランチや運動、地域開放のためのスペースをつくり出している。つまり、高床の起源である湿地帯や斜面地といった地球由来の敷地ではない人工造成地に、ヴォリュームを馴染ませ、住まい手のアクティビティを取り込んだ、純然たる「後天的」な高床住居として設計しているのである。高床形式は防虫性、防湿性、防犯性に優れているのはもちろん、今回の敷地においては、負のイメージとして扱われがちな擁壁やブロック塀のテクスチャを人工的なピロティ空間に取り込み、敷地を最大限広く活用している。そして2階の居住エリアは光庭をぐるっと囲む平面計画にしていることから、採光や自然換気効率を高めているだけでなく、1階との見え隠れする視線のやり取りによって程良く関わり合いを持つことができる。後天的な高床住居であるために、敷地一杯に広がるセミパブリックな1階と、風景を取り込む窓の多いプライベートな2階が生まれ、街と近すぎず離れすぎない適度な距離感を持つことができた。