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この計画は、約140年前に本堂と共に移築され、今日まで風雪に耐えてきた茅葺の客殿が、倒壊寸前にまで老朽化したことを契機として始動したものである。 敷地は利根川流域の水田地帯に張り出す河岸段丘上に位置し、かつては風光明媚な松林として地域に親しまれてきた。長きにわたり人々に愛されてきた旧客殿は、地盤の不同沈下により礎石と建物が大きく歪み、調査の結果、修繕の限界を超えていることが判明した。そのため計画は新築へと転じるに至った。 新たに構想された客殿には、慶弔仏事のための二つの広間、縁者の控え座敷、寺務所や厨房が整えられ、さらには災害時に地域の拠点として機能することも求められた。その計画は、将来的な諸施設との連携を見据えた空間構成と、地盤基礎の長期的な安定性の確保を要諦とした。また、旧客殿に用いられていた欅や松の古材を修復・再利用し、地域と萬松山高雲寺にまつわる記憶を建築に織り込み、次世代へと継承することを目指した。 意匠においては、隣接する本堂との関係性に配慮し、旧客殿と同様に入母屋屋根を継承した。外装は伝統塗料久米蔵で仕上げた杉格子をまとい、境内に静謐な空気を湛える建築とした。この様な建築的操作の集積によって、この客殿が懐古的復元改修を超えて、歴史的文脈に根差した存在感を獲得し、地域と寺院の記憶を次世代へとつなぐ架け橋となることを願っている。 *第19回 茨城県建築文化賞 優秀賞受賞、茨城県/日本 *A'Design Award & Competition 2025,Bronze of Architectural Design Category, Como/ Italy

