
PROJECT MEMBER
ふたつの細長い切妻屋根と中庭からなる、コの字型平面の平屋住宅である。敷地は、ぶどう栽培のためのビニールハウス群と昔ながらの農家形式の集落が残るエリアに位置している。既存集落は、ゆとりある土地の中で、生活のための大きな母屋と農作業や物置のための小さな納屋が、呼応しながら建っていた。この土地や既存集落が持つおおらかさや建築的要素は、新しい住宅を設計するうえで引き継ぎたいと考えた。周辺環境に溶け込むように、プロポーションや素材、勾配屋根といった要素を抽出した、ふたつの細長い切妻屋根をもつ住宅を提案した。大きな気積をもつリビング空間とプライベートな個室空間を、ふたつの屋根の下にそれぞれ配置し、それらを小さな廊下空間で接続した。アウトドアやDIYが趣味である施主のために、屋根の一部は延長し、大きな土間と納屋に見立てた外部収納を設けた。台形状に広がる敷地形状とコの字型の平面形状を組み合わせ、中庭、前庭、南東庭、半屋外の土間など、家族のプライバシーを確保しながら、異なる外部空間を形成している。中庭を生活の軸に据え、リビングには大きなふたつの掃き出し窓を、廊下には朝日が差し込む小さなすべり出し窓を、書斎スペースには安定した北側採光を確保する引き違い窓をそれぞれ設け、中庭に接する室内の特性に合わせ、適切に外部環境と繋がる居心地のよい居住空間を目指した。手を動かすことが好きな施主のために、外構はつくり込まず、内部には下地を設け、壁面や空間には余白を残した。施主が愛着を持ち、自らの手でこの家を育てていくことが、より豊かな暮らしにつながるのではないかと考えた。
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