




これは市街地にある、三方を隣家に囲まれた狭小旗竿地の計画である。 都市の中で与えられたこの場所は、光や風の通り道が限られ、外からの視線も重なるため、住まいに閉塞感をもたらしやすい環境である。しかし施主が望んだのは、そのような条件を超えて、静けさに守られながらも、光に満ち、心地よい開放感に包まれる暮らしであった。 その答えとして導き出したのが「外に閉じ、上に開く」という考え方である。 1階の主要な部屋にはあえて窓を設けず、外部からの視線を断つことで、安心感と静けさを獲得した。 一方で、2階には南北にハイサイド窓を、そして天井にはトップライトを設け、空から降りそそぐ光をやわらかく室内へ導き入れた。 都市に囲まれた敷地でありながら、光は時間とともに移ろい、室内に豊かな表情を描き、空とつながる開放感を生み出している。さらに、フロアを6層に分けて、空間を柔らかく仕切ることで、各居室を壁で区切らず、ひとつながりの大きな空間として計画した。 光はフロアを縦横に巡り、層ごとに微妙な陰影を落とし、視線はゆるやかに奥へ広がり、限られた敷地の中に思いがけない伸びやかさをもたらした。小さな部屋の集まりではなく、大きなひとつの空気の器として構成することで、暮らしの変化をやわらかく受け止める余白も生まれた。 この住まいは、都市の厳しい条件を背負いながらも、その中に新しい可能性を見出す試みである。 外に閉じて都市の喧噪を遠ざけ、上に開いて空と光を抱き込み、フロアを重ねる立体的な構成によって、都市の狭小地でも豊かで伸びやかな住まいをつくり出す。 都市に寄り添いながら、そこから一歩離れた静謐と開放を手にする、もうひとつの都市の住まいの在り方を示している。

