




PROJECT MEMBER
中国・大連の海沿いの開発エリアに計画されたこのオフィスは、四方に広がる海景を最大限に取り込み、都市の喧騒から切り離された静けさと知性をワークプレイスにもたらしている。 エントランスは、あえて照度を落とした“暗がりのトンネル”として構成。来訪者は緩やかに湾曲するステンレス壁に導かれ、光を帯びたロゴの反射が左官仕上げの壁や天井に多層的なレイヤーを作り出す。鏡面による反復表現を用いた壁付ベンチは、限られたボリュームに奥行きを生み、空間の“ヴォイド(Void)”をより豊かに感じさせる。 薄く差し込む自然光に誘われ、暗いエントランスを抜けた瞬間、空間は一気に開ける。明るい廊下からミーティングスペース、ラウンジ、オフィスエリアへと連続する構成は、視線と動線の解放を体験的にデザインしたものだ。入口の天井高をあえて抑えたのは、奥へ進むほどスケールが拡張していくダイナミックな対比を生み出すためである。 全体の色調は白と黒を基調とし、既存の窓枠も白で再塗装。建築的な要素を極力軽くし、素材そのものが持つ質感を丁寧に引き出しながら、過度な装飾に頼らず空間の本来の強さを引き立てることを意識している。 オフィスであっても流行に寄せすぎることなく、10年後も古びない佇まいを目指し、時間に耐えうる普遍性をデザインの核としている。 建具はフラットバーとLアングルを組み合わせた特注で、シャープな見付と静謐な質感を実現。床は無垢材のヘリンボーン貼りとし、ガラス越しに会議室やラウンジ、廊下、オフィスが視覚的につながるよう計画した。壁面収納は面一で構成し、ミニマルな静けさを空間全体に保っている。 光、素材、ヴォイド。 その三つの要素が重なり合うことで、このオフィスは“働くこと”のリズムと余白を静かに形づくっている。

