




補足資料


石の島の建築 瀬戸内海に浮かぶ香川県小豆島はオリーブの産地として認知されている。しかし、古来より小豆島石と言われる花崗岩の産地であり、良質な石は大阪城再建時には海を渡り石垣に使用されている。 敷地は小豆島の東に位置し、建設地のすぐ側にある福田港は姫路港と航路を結ぶ関西方面からの交通の要となっている。敷地周辺は穏やかな瀬戸の海と背後には小豆島特有の花崗岩が露出した切り立った山並みを望むことが出来る。 神戸に本社を置く建設会社は小豆島で砕石業を営み、新たに小豆島での砕石拠点として事業を拡大しようとしている。従業員は一日中山に入り、砂まみれになりながら石を取り出し、粉砕する作業を繰り返し行う過酷な仕事に従事している。しかし、社長はそんな過酷な労働環境の中だからこそ、社員には一日の仕事を終えて帰社した時だけでも暑さ寒さをしのぐだけでなく、小豆島の綺麗な風景と落ち着いた時間を味わえる事務所にしたいという想いを抱いていた。 それは砕石労働従事者の減少が著しいなか、石の島の未来を見据えた大きな問題として捉え、無理をせず地域らしい建築の姿を表現しようと考えた。 「新たな事業拡大の拠点」「過酷な労働環境に反する温かな建築」「地域社会の問題を解決するモノづくり」を創出する建築を目指した。 単純なプランから多様な場所を創る 変形な敷地形状に逆らうことなく、機能的にまとまった大きな空間と水廻りなど小さな空間を分節し配置した。その大小2つのボリュームの間には廊下を存在させず無意識で歩き回れるシークエンスの面白さを演出する階段を計画した。山と海の軸線にあり、抽出した風景が時折覗かせ、部屋の用途に限らず多様な場所をつくりだす。在来軸組工法の真壁や大壁納まりでは木材面としての認識が薄れるが、木質の持つ本来の質感や光を吸った時の木目の美しさなどを感じてもらう様に「抜けと留め」を面で構成した計画としている。緩やかにつながり、緩やかに分節するこの空間は多層に渡るオフィス空間においても常に人の気配を感じ自然を意識する印象を与える。CLTでないと成しえなかった面白さがここにはある。過酷な労働環境から開放され従業員は温かな空間に身を委ね、ひと時の休息を味わうだろう CLTダブルスキン CLTの持つ強度と耐火性を活かした構造パネルと軽量で高い断熱性能を活かした化粧パネルで構成したCLTダブルスキンの実現に挑戦した。化粧パネルは国内最薄のt36mmで構造負担はない。構造パネルに化粧パネルの自重も負担させるが60mmの縦胴縁を設置することで、2枚のCLTパネル間に自重によるエアフローを発生させた。化粧パネルには「シリコン系強撥水性塗料S-100」を表裏面に塗布することで木材への水の侵入を防ぐことが出来る。経年とともに紫外線による劣色は発生するが木本来の質感が露出され時間軸を感じることができる。また、万一の劣化が発見された場合でも化粧パネルのみの影響に留まり、軽量なので交換も比較適容易な利点を活かし、永くこの地に建築の姿を残し続けるであろう。 共に学び 共に育つ 建設業界の職人の高齢化、人材不足、人材育成の停滞などこれらの課題は小豆島に置いて近い将来大きな地域課題となるであろう。本計画の職人は当社に帰属する高齢のベテラン大工と高松から応援で若手の大工を呼び協働させた。徹底したプレファブリケーションは材料ロスの削減、工期短縮、人工数の削減、そして、「技術の共育」にも繋がった。全員が始めてCLT工法を施工した未経験者であり、当初は思う様に進まなかったが、ベテランの経験値と対応力、若手の柔軟性と効率化が融合し完成させた。建設業界の課題に対し「技術の共育」こそが明るい未来に繋がる解決の一つだと感じた。
