
PROJECT MEMBER
単なる供養の場を超えて、地域と緩やかにつながる多機能な納骨堂である。深い軒下空間が設けられたピロティーは、荒天時には駐車場としての機能を担い、子どもの遊び場や小規模な地域イベントの場としても活用される。この半屋外の空間は、亜熱帯の高温多湿な気候風土を受け入れながら、日常の営みに寄り添う柔軟性を備えている。2階の納骨スペースは、外周をコンクリートで囲い、台風による飛来物から内部を保護する堅牢な構えをもつ。一方で、自然光がコンクリート壁面に柔らかく反射し、空間全体を穏やかに包み込む。また、ガラリとハイサイド窓によって高低差換気を促し、空調に頼らずとも風が巡る快適な室内環境にもなっている。自然に抗うのではなく、その力を受けとめ、寄り添いながらあるべき姿を目指した建築である。開かれた空気をまとうこの納骨堂が、島の人々の記憶と日常をやさしく包み込んでくれることを切に願う。
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