
PROJECT MEMBER
博多と北九州の中間、遠賀郡岡垣町の田園地帯に建つ、医師とカウンセラー夫妻と2人の子のための住宅である。のどかな自然環境の中で子育てをしたいという思いからこの地を選び、妻の実家での原風景を手がかりに計画が始まった。軒先で七輪を囲む半屋外の暮らし、二間続きの和室で培われた家族の距離感、そしてカーテンを閉めずに四季の風景を取り込む開放性。そうした記憶と要望が設計の核となっている。キッチンや寝室、水回り、書斎などを壁で囲みながら緩やかに配置し、その隙間を家族共有のパブリックゾーンとした。現在では地域住民がリビングに集まり、話し合いの場としても使われるなど、公共的な役割も担う。かつて縁側から人が訪れたように、LDKから縁側、そして田園へと続く空間が人と風景をつなぎ、田園の風と光を五感で感じる穏やかな暮らしを育んでいる。