




PROJECT MEMBER
本施設は、小児歯科の専門医・指導医として活躍されている院長の新築移転開業に合わせて建設された、木造2階建ての歯科クリニックである。 子どもが安心して過ごせるよう、従来の病院らしさを抑え、やわらかな光と素材感に包まれたリラックスできる空間づくりを目指した。 敷地の周辺には、多くの参拝客が訪れる神社や、和塀が残る落ち着いた住宅が点在している。外観は地域の風景に馴染むよう、土壁の色調を基調に選定。サイディングの働き幅に合わせて水平の見切りを設け、目地の存在を消し外観を分節し、建物のスケールを整えた。これにより、歩行者に対して圧迫感を与えず、街並みに穏やかに溶け込む佇まいとしている。 この水平ラインは内部にも取り込まれ、開口部を通じて空間全体のデザインコードとして機能している。 計画の核となる診察室では、院長が求めた「直射光のない落ち着いた空間」と、スタッフが望む「自然光に包まれる空間」という、相反する要望を両立させることが求められた。 その解として、外壁沿いに16mにわたる吹抜けを設け、上部から柔らかな間接光を室内へ導入。梁がつくる陰影が時間や季節によって表情を変え、訪れる子どもたちやスタッフに豊かな光の体験をもたらす。 また、診察室は仕切りを設けずに広いワンルームとし、子どもの動きを見守りやすいよう計画。2階の格子状に組まれた床梁を屋根から吊る構造とすることで、大空間を軽やかに支えている。 動線計画においては、通路から吹抜け方向へと徐々に天井を高くし、自然に光の方向へ視線が導かれる構成とした。診察台に横たわると、空や映像が映るモニターが見える位置関係となっており、子どもたちが治療への不安を忘れられるよう工夫している。 全体の色彩は土色と木目を基調に、子どもの使うエリアには鮮やかな色を加え、子供達を案内するサインの機能も備えさせた。 木材を多用した温かみのあるインテリアが、地域の景観と調和しながら、子どもと家族に寄り添う新しい診療環境をつくり出している。

