八幡の家

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    小松隼人建築設計事務所
  • 施工
    キリン木材
  • 構造設計
    堀江聡建築設計事務所
  • 撮影
    矢野紀行

多方向の景色を繋ぐ 広島市の郊外地に計画しました住宅です。敷地の西側は八幡川が流れ、北側に目を向けると、湯来温泉に繋がる山並みを望むことができます。さらに南隣は実家の雑木林が敷地と連続し、多方向に景色が楽しめる豊かな環境でした。建主はこれまで暮らしてきた市内中心部の住まいを離れ、豊かな自然環境とともに趣味のアウトドアや植物たちに囲まれた生活を送ることができるこの場所を選ばれました。 今回の計画では「多方向に景色が繋がる住宅」として、各方位に合わせた固有の見せ方を考えながら全体を構成しています。つまり「暮らしと景色をつなぐ結節点」のような住宅がこの場所にふさわしいのではと考え、計画を進めていきました。 【南方向】 正面に見える実家の雑木林とのつながりをつくるためにL字型の南庭とLDKを配置しました。LDKの開口は庭に合わせてL字に開放でき、庭と合わせて奥行きの深い軒下空間をつくりました。さらにリビングの延長として客席のような大階段をつくることにより、腰をかけて庭の景色を楽しむことができます。 【西方向】 八幡川を望むことができますが、川沿いの交通量が多く視線と日中の騒音が大きいことを考慮して「傾斜塀」を立てました。塀を斜めに切ることで「開く」「閉じる」の中間的な状況となり、閉じながらも視線の抜けた景色を楽しむことができます。さらに屋根と合わせた塀の勾配が建物と一体的な繋がりをつくり出すとともに、遠景に見える山並みとの調和を図っています。 【北方向】 階段の踊り場を拡張し、カウンター設けて書斎エリアとしました。階段の昇降だけでなく、景色の移ろいを感じながら読書などを楽しむことができます。南側のサッシと書斎カウンター上のサッシを開放することで南北に風が通り、さらに2階廊下のサッシも開放することで、上下方向にも風が通る計画としています。 来客の多い建主にとっては、リビングだけではなく様々な場所で寛いでいただくための空間が大切な住まいの要素となります。場所を固定しない、風景を限定しない暮らし方が、家族で築く新たな住まいだと考えています。

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