


PROJECT MEMBER
名古屋市千種における多目的サロンの計画である。 本計画は駅前に建つ、1フロア1テナント型の賃貸ビルで専用と共有面積合わせて30㎡とコンパクトながら9階建ての鉄骨造と、垂直性の高い建築物の5階部分にあたる。 現場実測を重ねる中で、既存鉄骨柱を覆う化粧の丸柱をはじめ、街に対して曲面を描くファサードとバルコニー、避難用の螺旋階段、垂直矩形が貫通するエレベーターと30㎡の中に多様な「カタチ」が建築全体を構成している事に気付いた。 一方で、本計画は路面店ではなく5階での計画となるため、 街との関係が俯瞰的で、街とはどこか少し切り離された印象を受けた。 そこでこのビルの中に入るサロンの計画として 既存の持つ「カタチ=オブジェクト性」を継承しつつ、路面店ではない街との関係性の再構築を軸に計画を進めていった。 求められたサロン像は、週の半分は美容室として、その他は貸しギャラリーやヨガスタジオとして利用出来る多目的空間である。したがって什器は可変性と可動性を兼ね備え、用途転換に柔軟に対応できることが求められた。また専有面積は約19㎡と限られるため、いかに広く感じられる空間とするかも重要な課題であった。 まず、このビルに内在するオブジェクト性に呼応するように、鏡、待合ベンチ、受付台兼ロッカー、集髪所、シャンプー台など、あらゆるパーツをシンプルなオブジェクトとしての造形を与え、このビルを構成するハードなモノとの関係性を紡いだ。また、多用途に対応するために、スタッキングの機能や組み合わせる事で使い方の幅が広がる設えとした。 街との関係性については、千種駅の駅前にはロータリーがあり、都市の中で大きな空地を生み出している。その周囲に大きな樹木が植樹され、さらに赤茶色のタイルが印象的な千種ターミナルビルがランドマークとして存在し、特徴的な駅前の風景を作っている。 これらの街の要素をさりげなくサロンの中に宿す事で、この街の体験を高層階でも感じられるのではないかと考えた。 多用途なサロンというニュートラルな空間の中に、千種ターミナルビルの赤茶色の光が差し込み、三角柱の鏡の天板は、目の前に広がる緑と呼応しする。天井面はシルバコートとすることでかすかに街の雰囲気を反射し内部へ引き込む。路面店では得られない、街を俯瞰する位置だからこそ生まれる街との関係性。その距離感の中で新たに立ち上がる繋がり方こそ、高層階における街とのひとつの接続の在り方だと考えている。

