tomoss yanaka

ビルディングタイプ
その他住宅

補足資料

映画「の・ようなもの のようなもの」 の風景
その他
配置図
図面

DATA

CREDIT

  • 撮影
    小川重雄
  • 設計
    山﨑壮一建築設計事務所
  • 施工
    株式会社渡辺富工務店
  • 構造設計
    オーノJAPAN

映画「の・ようなもの のようなもの」に、志ん田(松山ケンイチ)と志ん魚(伊藤克信)と夕美(北川景子)が誤って捨てられた「ある物」を取り戻すため必死にゴミ収集車を追いかけるシーンが出てくる。谷中の街並みを背景にしたこの場面は映画の空気感を象徴的に表すとても印象的なシーンである。 このいかにも谷中らしい風景として映っていた場所が本プロジェクトの計画地である。上の場面の背景に見えていた大きな家は大正時代から建つ母屋にあたり、広い敷地内にはこの他に、住宅が2軒、木造アパートが2軒建っていた。これらの建物に囲まれた中庭は様々な樹々に覆われ、一画には小さな祠があってお稲荷様まで祀られていた。建主は先代から受け継いだこの土地と建物、生活を大切に守り続け、今も毎朝毎夕のお参りを欠かさない暮らしを営まれている。 最初にご相談があったのは2016年。第一期計画として、まずは母屋の建替えを行うこととなった。母屋は昔ながらの日本家屋で、建主とともに居間に座り先代の歴史や思い出をうかがっていると、都心にいることなどすっかり忘れるほど、ゆっくりとした時間が流れていた。じっくり中を見渡せば、もちろん全体的に老朽化が進んでいたが、この建物が良質な部材でひとつひとつ丁寧に作られていることがうかがい知れる。床柱・床框、雪見障子・襖などの建具類、欄間、敷石・沓脱石、様々な部材や調度品、解体後廃棄するにはあまりにももったいない。多少のキズは建て主と先代の思い出が刻まれているようである。この場所に刻まれた記憶を継承するように、これらの部材をできるだけ保存し、建て替える住宅の中に取り入れる計画とした。計画にあたっては、ありとあらゆる部材の採寸から始め、柱間・鴨居の高さ等、単純な尺間であわないところも部材にあわせ基本計画段階で細やかに寸法調整をおこなった。新築でありながらも、あたかも昔から存在していたようなすまいを目指した。前面の道に対しては、改めて谷中らしい背景となるべく、切妻平入りで深い庇をもつ形式とした。 母屋の建築後、続けて第二期工事として、敷地南側に平屋の賃貸住宅を建設、さらには中庭の整備をおこなった。中庭は大きく環境を変えることのないように、木々の配置は変えず新たな中低木を添える程度としている。また使われていない池を組み直して枯池として整えつつ、踏み石を配置し直すことで回遊しやすい道を整えた。祠前の鳥居はそのまま材を更新して作り変え、枯池にかかる橋とともに小さな参道を整備した。建主が行う変わらない日常がただ継続されることを願っている。(作庭:エービーデザイン・正木覚氏) 2022年より第三期の計画がスタートする。母屋と繋がるように、道路沿いに賃貸の店舗+住宅を計画した。谷中は歴史ある寺町の持つ静けさと、活気ある下町の賑やかさをあわせもつ街である。このプロジェクトが単体の建築計画にとどまらず、谷中の街づくりの一端を担えるようにと考え、建主との相談の中で、このようなプログラムの選択となった。現在、1階には和食を提供する店が入り、通りには程よい活気がこぼれている。 一連の建築には、デザイナー井田明子氏によって、「tomoss yanaka」というネーミングを付けて頂いた。「庭の風情に心が癒やされる静寂」「和やかな光が作り出す空間」的なイメージとともに、「そっと光を灯すように、昔と今を優しく照らし続ける」こと、がイメージされている。過去から受け渡されてきた大切な街づくりへの関わりとして今後もじっくりと向き合い続けていきたいプロジェクトである。

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