60年の時を紡ぐ、再生の宿り木

ビルディングタイプ
戸建住宅
3
76
日本 栃木県

補足資料

Before
その他

DATA

CREDIT

  • 撮影
    STUDIO-QUALIS木村
  • 設計
    Banana works LABO
  • 担当者
    佐藤弘人 / 吉澤孝之
  • 施工
    Banana works LABO

旅するように暮らす、縁側のあるリビングダイニング 本計画は、これからの人生を穏やかに過ごすことを望まれたご夫婦のための、戸建住宅リノベーションである。 賃貸住宅での暮らしから持ち家へと住まい方を転換する中で、新築も視野に入れ検討されたが、土地条件と予算の乖離から、築60年の中古住宅を取得し再生するという選択に至った。 求められたのは、単なる性能更新や間取り変更ではなく、「旅館のように心がほどける非日常性」と「日常として成立する居心地」を両立させる住空間であった。 庭に面し、縁側に腰掛けながら語らう時間、旅を趣味とするご夫婦が“旅するように暮らす”感覚を、住まいの中に内包することが本計画の核である。 築60年の既存住宅が持つ構造や時間の蓄積を尊重し、柱や建具といった要素を安易に排除せず、空間を緩やかに仕切る装置として再解釈した。 これにより、完全なワンルーム化では得られない奥行きと、縁側的な中間領域が生まれ、内外・新旧・動と静が柔らかくつながる構成としている。 LDKは回遊性を持たせ、夫婦二人の距離が自然に近づくスケール感に調整した。 キッチンは対面型とし、腰壁には本棚を設けることで、料理をしながら本や旅の記憶に触れ、並んで立ち会話が生まれる「語らいの場」として位置づけている。 家事空間を機能優先の場所ではなく、生活の質を高める場へと転換した点も本計画の特徴である。 また、北側壁面にはノコ目を施した無垢材を用い、間接照明によって陰影を強調した。 均質な明るさを求めるのではなく、光の濃淡がもたらす静けさと奥行きを意図的に取り込み、旅館の一室のような落ち着きと非日常的な癒しを演出している。 本計画は、新築の完成度を目指すのではなく、既存住宅が持つ記憶とご夫婦のこれからの時間を重ね合わせることで、「住み継がれる空間」を再構築する試みである。 日常の中に小さな非日常を忍ばせ、人生の旅路を支える“よりどころ”としての住まいを提案した。

物件所在地

3