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「KItoNOKO」は、注文住宅、リフォーム・リノベーション、不動産、土地活用を展開する日興ホームグループの新拠点として計画された。これまで家を建てた人、その家のこれからを相談したい人、そしてこれから住まいを考える人にとって、「実家」のように気軽に立ち寄れる場を目指している。 敷地は広島市の湾岸部、1982 年の埋立事業によって造成された広大な流通業務地域に位置する。周囲は工場や倉庫、事業所が並ぶ硬質な環境であり、住宅は存在しない。人が日常的に暮らす風景の欠けたこの場所に「家」の空気を持ち込むことが、設計の出発点となった。建物は木造モジュール910mm を基本とし、住宅スケールを随所に取り入れている。商談ルームの天井高さや、2730mm×2730mm(4 畳半)のグリッドは、住まいを体感的に想像しやすい寸法である。訪れる人にとって、建物全体が住まいの延長のように感じられることを意図した。 グリッドは反復されつつ北側道路に対して45°傾けられ、外壁は雁行する構成とした。これにより大通りからの視認性を高め、さらに駐車場との間に生まれた三角形の余白を植栽で満たすことで、人工的な埋立地に柔らかな自然の気配を挿入している。内部構成は1 階に広く人を迎えるエントランスホールとオフィス、2 階には商談ルームを配置。中央には道路に平行する吹抜けを設け、その周囲を回遊できるように計画した。斜めの平面構成を歩くことで、奥行きの感覚が増幅し、限られたスパンの中に豊かな広がりを体験できる。 開口部は住宅用アルミサッシを用い、1 階は北東と南西、2 階は北西と南東、欄間階は北東と南西に向けて設けた。視界は遠くの山並みや空へと斜めに抜け、硬質な近景の工業地帯と程よい距離感を生み出す。 構造は木造架構を表しとし、梁を2730mm グリッドの対角に架けて三角フレームを連続させ、床の水平剛性を担保している。通常なら合板が届かないスパンを解消するために、75×105 の垂木を細かく並べ、その上に合板を敷く方法を採用した。荷重条件に応じ、2階床は@113.75、屋根と欄間床は@303 のピッチで垂木を配置している。 仕上げには15×30mm の木格子を延べ5000 本以上使用した。高価な素材ではないが、同一ピッチで丁寧に施工することで、上質感とリズムを獲得している。梁に沿って設けた間接照明は垂木の陰影を際立たせ、室内を柔らかな光で包み込む。格子や構造材には塗装を施さず、木本来の香りと質感を活かすことで、居心地のよい「家」の空気が満ちている。 環境計画としては、1 階ホールに床暖房を備え、吹抜けを介して冬季には暖気が上階へ自然に回るよう設計した。吹抜けまわりの空調はダクト式とし、設備が空間に主張しすぎないよう欄間床内に収めている。 「KItoNOKO」は、単なる企業の支社ではなく、人が訪れ、過ごし、安心感を覚える「みんなの家」である。硬質な都市の埋立地に、木造のスケールと住まいの感覚を重ね合わせることで、オフィスのあり方を住まいに近づけ、地域に新しい風景を生み出す試みとなった。
