滑床ビジターセンター万年荘

ビルディングタイプ
その他公共施設
23
1,222
日本 愛媛県

PROJECT MEMBER

DATA

CREDIT

  • 撮影
    しんめんもく 後藤健治
  • 設計
    YOUBI
  • 担当者
    与語 一哉 / 古庄 百合香
  • 施工
    金谷建設合名会社
  • 構造設計
    有限会社ケイツー建築設計所 / 中西智也
  • 室内家具
    YOUBI
  • 賞歴
    JID AWARD2025入選 / タニタハウジング屋根のある建築作品コンテスト2025非住宅部門優秀賞 / DFAアジアデザイン賞 Merit賞

自然と人、地域資源をつなぐ拠点 愛媛県宇和島市、足摺宇和海国立公園内に位置する滑床渓谷。四万十川の支流・目黒川が流れ、川のせせらぎや鳥のさえずりが響き渡るこの地に、滑床渓谷ビジターセンター万年荘は、自然と人が深く繋がる拠点として竣工した。 かつて60年にわたり登山客に親しまれた「ユースホステル万年荘」の想いを引き継ぎ、本施設は休憩や観光発信のみならず、滑床の魅力を深く知る展示機能とアウトドアスポーツ支援を備えた、地域資源をつなぐ新たな玄関口としての役割を担っている。 設計において最も重視したのは、国立公園の豊かな自然環境との「調和」と「連続性」である。 敷地の特性を活かし、建物南側に設けた2間奥行きのテラスと深い軒は、天候に左右されず外部と内部をシームレスに繋ぐ。来訪者は、室内からも目黒川のせせらぎや柔らかな光を存分に感じることができる。 外観は国立公園の規定に則った切妻屋根を基本としつつ、周囲を囲む1/10勾配の下屋根によって高さを抑えた水平ラインの美しい佇まいを実現した。この緩やかな勾配は、落雪への配慮であると同時に、滑床渓谷の雄大なパノラマを視界から遮らないための意図的な設計である。 内部空間を象徴するのは、天井現しとした力強い木構造である。 特筆すべきは、この大空間を支える構造材のすべてに愛媛県産杉の流通規格材(長さ4m材)を使用している点である。設計段階から3Dモデルを用いた高度な架構検証を行うことで、特注材に頼ることなく、連続して伸びる登り梁によるダイナミックな空間を実現した。 この合理的な構造計画は、コスト抑制と同時に、地域林業への経済循環を生み出す「未来志向の木材利用」のモデルケースでもある。ガラス越しに外部へと連続する木架構は、森の樹木と有機的に響き合い、視覚的な広がりを室内に付与している。 内装木部の仕上げには、日本古来の天然塗料である柿渋を採用した。柿渋が持つ防虫・防腐効果による長寿命化を図るとともに、年月を経て深まっていく木肌の美しさは、来訪者に木材の環境貢献性を無言のうちに伝える。 また、建物西側のファサードには滑床の石を彷彿とさせる石壁を配し、土地の歴史を継承。休憩スペースの家具もまた、渓流の石の有機的なフォルムからインスピレーションを得て設計・製作した。椅子やソファの生地に至るまで滑床の色彩を投影し、空間の細部に至るまで地域の息吹を宿している。 温熱環境においても自然の力を最大限に活用している。休憩スペースの天窓を利用した重力換気により、川面を渡る涼風を取り込み、一年を通して快適な室内環境を保つパッシブデザインを導入。外部アプローチにはスロープを設け、自然環境をシームレスに内部へ引き込むバリアフリー設計を徹底することで、すべての人に開かれた空間を目指した。 滑床渓谷ビジターセンター万年荘は、公共建築における合理的な構造計画と地域資源の活用を組み合わせた、持続可能な建築のあり方を示している。 60年近く愛されてきた「万年荘」の精神を受け継ぎ、この場所が訪れる人々にとって、滑床の自然を心ゆくまで満喫し、自然と人との豊かな関係を未来へと育む場となることを願っている。

物件所在地

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