




補足資料


約半世紀前に建てられた歯科医院を改修するプロジェクトである.敷地は福岡市東区香椎.立花山や三日月山のふもとであり,周囲の風景や街並みが変化し続ける郊外住宅地に位置する.その中で長い時間この地にあり続けてきた建物を,変わらない地形と見立てた. この地形としての量塊を掘り,うがつことで利用者のための居場所をつくり,土に包まれた落ち着きのある空間を目指した.待合や診察室からは共に時間を重ねてきた庭の樹木や,変わり続ける街の風景を望むことができる.その一方で、消毒室やカウンセリング室など高いプライバシーが求められる諸室は量塊内部に集約し,機能を地形の奥行きの中に収めている. 歯科医院では利用者が上を向いて過ごす時間が長い.そこで天井に光の掘り込みを設け,まぶしさを抑えた柔らかな光環境を計画した.診察室では既存の梁やブレースを避け,かつ,視線に入らない位置にトラフ型照明を配置し,均質な照度を確保した.待合では筒状のダウンライトが光だまりを生み,穏やかな印象をつくっている.天井奥から差し込む光は,地形にうがたれたトップライトのように外部とのつながりを感じさせる. 香椎の山々が赤土によって構成されていること,また既存建物に施されていた赤土色の外観を手がかりに,内外装とも赤をベースとした落ち着きのある色彩を選定した.外部には地場の赤石を用い,洗い出しや砕石,砂利など多様なテクスチャーを重ねている.土地の記憶を静かに引き継ぐこのクリニックが,これからも地域の健康の拠り所となることを願っている.



