
PROJECT MEMBER
DATA
- ビルディングタイプ
- その他オフィス・企業施設
- 構造
- 鉄骨造
- 工事種別
- 新築
- 延べ床面積
- 317.4㎡
- 竣工
- 2025-04
CREDIT
- 撮影
- ARCREC株式会社 東涌宏和 / 青木心平
- 設計
- 青木建築設計事務所
- 担当者
- 青木 心平
- 施工
- 株式会社丸正青木建設 / 株式会社セガワ
- 構造設計
- 青木建築設計事務所
- 照明計画
- 青木建築設計事務所
栃木市の市街地と田園地帯の境界に建つ、社員数約15名のガス供給会社の新社屋である。建物は全体の約3分の2を店舗・オフィス、残りを住宅とする用途構成とした。 人材確保が難しい業界背景の中、施主からは「オフィスらしくなく、働きたいと思える社屋」という要望があった。これを「居心地の良さと、仕事に向かう適度な緊張感が共存する空間」と解釈し、外観は周辺環境を読み取った簡素で間口の広い形態とし、内部は自然素材を用いながら空間にメリハリを持たせる計画とした。 建物は前面道路からの圧迫感を抑えるため平屋建てとし、周辺の田園風景に点在する素朴な建築(牛舎や豚舎、農業用施設)を参照した切妻屋根のプロポーションとしている。北側のエントランスファサードは、基礎を片持ちとし、構造的・経済的合理性の範囲で建物を地面から浮かせることで、軽やかな印象を与えた。 内部空間には、一般的なオフィスではあまり採用されない勾配天井を積極的に取り入れ、美術館や店舗のような開放感のある空間を目指した。勾配天井の頂部にはハイサイドライトを設け、木製ルーバーを介することで直射日光を和らげながら、柔らかな自然光が室内全体に行き渡るよう調整している。 勾配は5.5寸とし、「蔵の街」として知られる栃木市に多く残る蔵の屋根勾配を調査した結果を反映させた。施主、社員、設計者がいずれも地元出身であることから、地域性を空間に静かに織り込むことを意図している。南側の休憩コーナーからは、季節によって田園に広がる稲穂を望むことができ、自然や地域の風景を身近に感じられる場としている。 内装仕上げには、クリーンエネルギーを扱う施主の理念を反映し、再生材である硬質木毛セメント板、使用済みコーヒー豆を原料としたセメント板(SOLIDO)、天然木を組み合わせて使用した。特に天井に用いた硬質木毛セメント板は、耐火性・断熱性・調湿性・吸音性に優れ、オフィスに求められる機能を自然素材によって満たしている。 働き方については、当初希望のあった全面フリーアドレスを見直し、業務内容のヒアリングを踏まえて、基本は固定席としつつ一部にフリーアドレス的なスペースを設けた。業務効率と柔軟性を両立させるとともに、オフィスでは珍しい靴を脱ぐスタイルを採用し、リラックスして仕事に向き合える環境としている。 断熱性能は省エネ基準を上回る水準を確保し、高断熱住宅並みの性能とした。空調には住宅用壁掛けエアコンとガスファンヒーターを採用し、施主が自社で維持管理できるよう、配管経路や点検性を設計初期から考慮している。床下には45cm以上の懐を確保し、将来的な間取り変更や設備更新にも柔軟に対応可能な計画とした。 屋根には太陽光発電パネルを設置し、浸水を考慮して室内に蓄電池を配置することで、平常時の省エネルギー化に加え、災害時にも照明や空調が使用できる自立性を確保している。また、非常時に接続可能なガス配管を外部に設け、地域インフラを担う企業としての社会的持続性にも配慮した。 照明はダウンライトからダクトレール方式へ変更し、運用の自由度を高めた。JISで求められる照度を確保しつつ、豊富な自然光により、実際の運用では手元灯以外の照明使用を最小限に抑えている。 構造は、施主が過去に水害を経験していることから鉄骨造を採用し、各スパンを同一架構とするシンプルな構成とした。床レベルを外構仕上げより高く設定することで、水害時にも迅速にガス供給業務へ移行できる計画としている。 本計画は、地域性に根差した形態計画、パッシブデザインによる省エネルギー、再生材の活用、設備更新性への配慮、災害対応といった多角的な視点からサスティナブルな設計を行ったものである。結果として、コスト・働き方・将来更新性のバランスが取れた地方中小規模オフィスの一つのモデルを目指した。 完成後には新規採用にも良い効果をもたらしているようで募集人数がすぐに採用できた様である。
