伊敷台の家

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 撮影
    Hiroki Isohata / Kazumasa Tabuchi
  • 設計
    株式会社おりなす設計室
  • 担当者
    田渕 一将
  • 施工
    株式会社A&G Company
  • 構造設計
    田渕 一将

 南東角地のゆるやかなカーブを描く歩道に面したこの敷地で、私たちが問うたのは「建築が街にどう応答し、時間とともにどう育っていくか」でした。 通学路を歩く子どもたちの目線、カーブする街並みの連続性――建築のプロポーションは、外部環境との関係性の中で決定されています。塀の高さを人の目線に合わせて抑え、漆喰と杉材を基調とした落ち着いた佇まいで、地域に"受け入れられる建築"を目指しました。 【視線と光を紡ぐパッシブデザイン】  一般的な「南面重視」のセオリーにとらわれず、敷地形状・通風・景観を優先し南北に伸びる縦長プランを採用。南面は交通量の多い道路に面するため、吹き抜けで視線を制御しながら日射と光を取り込む設計としました。吹き抜け上部のコーナー窓は、周囲からの視線を避けながら空を切り取り、季節ごとの太陽高度に応じて熱と光を室内へ導きます。外構には板塀と植栽を組み合わせ、通行人の視線を自然にカットしつつ、室内からは緑の小庭園を楽しめるよう計画しました。 【空気の流れをデザインする】  吹き抜けで上昇した暖気を、3層の段差を設けた勾配天井で高所に集め、そこに配置したエアコンで効率的に循環させる。最小限の設備で快適性を実現する、シンプルで合理的なシステムです。 【"電気をためない"エネルギー循環】  約7.5kWの太陽光パネルを東西の屋根勾配面に分割設置し、朝夕の発電効率及び自家消費率を向上。南東のファサード側からパネルが視認されにくいよう景観に配慮しました。あえて蓄電池に頼らず、AI制御のHEMSで余剰電力を効率的に自家消費へと導く設計とし、将来のV2H対応準備も整備。脱炭素社会への現実的なステップを、日々の暮らしに根差したかたちで提示しています。 【時間軸の中で育つ建築】  外壁には調湿性に優れた漆喰や杉板貼りといった自然素材を用い、経年により風合いが深まっていく設計としています。建築を「完成品」ではなく「育てていくもの」として捉え、世代を超えて住み継がれることを目指しています。 この家に込めたのは、「地域に根を張り、長く愛される建築をつくりたい」という想いです。街並みへの応答、環境との調和、時間とともに成長する柔軟性――建築が周囲と関係を結びながら、長い時間軸の中で存在し続けることを目指しました。

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