




「ひのき舞台に立つのは雄大な瀬戸内海の自然であり、変わりゆく景色であり、悠久の時間である。」 この住宅は、愛媛県のしまなみ海道の島に建てられた週末住宅です。 平日の街での喧騒から離れ、週末に瀬戸内海の水面を眺めながらゆっくりと過ごせる家が求められました。 堤防を避けて海を眺めて生活するために必然的に建物を持ち上げる計画になります。 建物を持ち上げることで高潮対策にもなり、合理的な建築計画になりますが大地と生活が切り離されてしまいます。 そこで建築に対して「土手」と「舞台」という2つの要素を付加することで建築と大地、生活と自然をひと続きに感じられるように計画しました。 「土手」 まず土手ですが、敷地のあるしまなみ海道の島の特徴ですが、海からすぐに急峻な斜面なります。建物の裏には目を見張るワイルドな植物たちが建物の背景になり、土手を造ることで持ち上げられた建築を自然に近づけることができました。 また、土手を造ることで2階の舞台からの距離も近くなるので手すりがなくダイレクトに海につながる景観も得られます。土手には沢山の植栽を施すことで防風林や視線避けのバッファになっていきます。風に揺れる植栽を見ることで窓を閉じていても自然を感じられる装置にもなります。 「舞台」 建物の間口目一杯に広がる奥行き1.5mの濡れ縁です。無塗装の檜材で作られていて経年変化で、室内のグレー色のフローリングとひと続きになるように考えています。室内の床を拡張した濡れ縁は室内から見ると道路や堤防などを隠してくれて、海に直接空間が接しているような感覚にしてくれる役割を果たしてくれます。 軒の深い室内からは窓や、濡れ縁、土手、道路、消波ブロック、砂浜を飛び越えて、視界には青々とした瀬戸内海としまなみの島々が広がり、ダイレクトに自然とつながる錯覚を覚える空間が出来上がりました。 舞台と名付けられた濡れ縁の先に主役の自然が広がり、その様を見るための客席が2階に持ち上げられた空間になります。登り垂木やタイバーなどのディテールを積み重ねることで舞台への方向性を作りシンプルな空間を目指しました。 土手沿いにエントランスがあるので、まずは土の中に入ったような有機的で薄暗い光を押さえた1階の空間があり、華奢な階段を登っていくと眼前には瀬戸内海が広がるシークエンスの楽しめる空間構成になっています。 濡れ縁に座ってお酒を飲んだり、寝そべったり、客席と舞台、生活と自然を行き来できる建築ができました。