




郊外にある敷地は、高度成長期以降、国道に指定された幅員22mの道路に面している。この敷地のある首都圏を取り巻く地域は、これまで様々な社会状況の変遷を受けながら現在でも首都圏の「郊外」としてあり続けている。 「郊外」としてあり続けている地域に広がる風景は、決して特別な表情を持ってはいない。それはどこにでもあり、またどこでもない風景といってよい。通常、この地域の建築はたとえどれほど特異な表情をもっていたとしても経済主義の波に掠め取られてしまう。私たちができることは、そこにわずかな指標のようなものを刻むこと以外にはないであろう。 クライアントは電子精密機器を扱う会社であるため、計画では火災や地震災害を考慮して建物を鉄筋コンクリート造とした。 コンクリートはソリッドで、かつ彫塑的な素材である。そのコンクリートの表面に私たちは指標となるような何らかの「徴し」を刻み込もうと考えた。ソリッドな素材を深く、あるいは浅く刻み込むことで、無表情な「郊外」の風景にわずかな陰翳を落としたいと考えた。 試行錯誤の上、国道に面する東南方向のファサードには配管材料を用いてチューブ状の水平ストライプを刻み付けた。この大小あるチューブ状の水平ストライプは、電子の通路となる配線などを製作しているこの会社を象徴させたものである。この建物が都市の「郊外」における小さな里程標となることを願っている。