雑司が谷の家

ビルディングタイプ
共同住宅・集合住宅・寮

DATA

CREDIT

  • 撮影
    砺波周平
  • 設計
    鈴木雅也建築設計事務所
  • 担当者
    鈴木雅也 / 細川祐人
  • 施工
    株式会社渡辺富工務店

計画地は、閑静で自然豊かな雑司が谷の情緒漂う住宅街にあった。最上階にある角部屋の計画住戸からは、広い空を通して町や緑が一望でき、気持ち良い風がよく抜けた。そんな環境に呼応するように、厳選された家具や小物と共に建主は15年程ほど暮らしており、家と建主の信頼で生まれる親密な空気も相まって、時の流れのゆるやかな居心地良い家だった。手を加えるのは恐縮な思いの中で、現存する心地良さを継承する改修を目指した。 住戸はR C壁式構造の建物であり、その特性によって自然と生まれてしまう玄関から居間食堂までの長い廊下と付随する部屋という空間構成となっていた。その小さな空間やスケール感がこの住戸の持つ心地良さの原因の一つだと考えた。そこで、壁を壊し空間を広げる改修ではなく、現状に倣い、空間を分割し、回遊動線によって各部屋を繋げていく部分リノベーションの在り方を検討した。結果的に、平面計画は、主寝室の横に小さな書斎とW.I.C.を増設し、居間食堂へ抜ける動線と、図書室から水廻りに抜ける動線をとる変更のみとなった。小さな変更ではあるが、回遊動線による利便性、光や風の巡りの向上など、大きな住環境の改善となった。かつての親密なスケール感は守りつつ、連続的に繋がった部屋の構成によって、空間の広がりは以前よりも感じられる。また、廊下は天井を下げ、砂漆喰塗とし、光の陰影を感じる抽象的な空間として他の部屋と差別化した。 引越後、落ち着いた時期に訪問すると、かつての家にあった親密な空気感は変わらないまま気持ち良く暮らしているのを見てほっとした。長年住んだ家のリノベーションは、性能や機能性の向上だけでなく、目には見えない空気や記憶の継承も大切なのではないだろうか。

物件所在地

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