




補足資料





PROJECT MEMBER
大正期の作家・有島武郎が所有していた自然豊かな農場跡地の丘を望む。 北海道・ニセコ町から町道を東に一直線に進むと、真っ正面に羊蹄山が聳える。 その景色に見惚れると、ついつい通り過ぎそうになる公園入口手前に敷地はある。 農場跡地の丘沿いに弧を描いて流れる尻別川の清流が境界線となり、緑豊かな丘と敷地を形作っている。 自然が形作った地形と景色に呼応するように、建物にも曲線を持たせ、環境との調和を図った。 その相互関係により、自然と建物の間に円形の中庭が形作られる。 清流とともに吹く風が、弧を描くファサードから渦を巻いて中庭へと吹き込むようなイメージだ。 手つかずの森と羊蹄山からの清流を庭の一部と捉え、外部環境との体感的連鎖の象徴として、縁側を計画の中心とした。 庭とファサードの境界線に沿って一本の弧を描く縁側を建物の内外に設け、前面を庭に向かって開口部とし、限りなく開放的にした。 すべての部屋は、この一本の縁側により繋がっている。 そして各部屋の引込み戸を開け閉めすることにより縁側は分節され、各部屋の一部となる。 この縁側は、人の居場所であると同時に、外気と室内の間に生まれる中間領域として、熱や風を緩やかに調整し、冷暖房への依存を抑えるパッシブな環境装置としても機能している。 椅子を置くのに十分なスペースからは、引戸の開閉に関わらず、それぞれがくつろぎながら四季折々の壮大な景色を楽しめる。 大きく外部へと跳ね出した庇は、夏の日射を遮りながら冬の低い太陽光を室内へ導き、天候を問わずシームレスに自然との対話を可能にする。 外部の庇の構造体をあらわしとし、それらの梁を内部の縁側まで引き込むことで、空間的なグラデーションを生み、 内部にいながらも、半屋外な雰囲気を感じることができ、内外の境界を限りなく曖昧にしている。 外壁には道産スギ材を、内壁の突板には道産シラカバ材を用いることで、メンテナンスを容易にしつつ、輸送による環境負荷を抑えた。 構造材にも道産材の集成材を用いることで、輸送による環境負荷を抑えながら、地場産業に貢献している。 この建物は「建てる=隔てる」という葛藤の中で、限りなく中間領域を意識した計画としている。 建物の利用者の意識を周囲の環境へと強く向けさせ、環境との視覚的な連続性と一体感を醸成する。 単に外部に開けているだけではなく、機能面や構造、仕上げ方により境界線を曖昧にした。 自然と向き合い、ただただ安寧な時間を楽しむ場として計画した。
