馬小屋と橙の納屋

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 撮影
    Benjamin Hosking
  • 設計
    服部信康建築設計事務所
  • 担当者
    服部信康 / 古賀将太
  • 施工
    株式会社 荒木工務店
  • 構造設計
    高橋俊也構造建築研究所

本計画の敷地は、工場や老人ホームが点在する雑多な都市の片隅にある、旗竿状に切り分けられた小さな砂利敷きの土地である。スケールや機能が混在する周辺環境の中で、形態的な主張を前面に出すのではなく、この場所で暮らす人の生活に目を向けることから設計を始めた。 美容室を営む夫と、その活動を支える家族の生活リズムや外部との関わり方を丁寧に観察し、家族が同じ気配を共有しながら暮らせる住まいのあり方を探っていった。限られた予算の中で過剰な機能を排し、馬小屋のように潔い一室空間として生活機能を集約した、ひとつの箱を計画している。 構造は、間口5,904mm、ピッチ606mmの木造架構を基本とし、一部にスチールを組み合わせた。空間の中央には浴室・脱衣所・クロークといった必須機能をまとめたボックスを配置し、その周囲にリビング、ダイニングキッチン、洗面、子供室といった領域が架構の下で緩やかに連続する構成としている。大屋根のもとに広がる余白は用途を固定せず、住まい手の解釈によってかたちを変えていく曖昧な居場所となっている。 また本住宅では、鉄工所で家具や建築金物の制作に携わってきた 古賀将太 との協働により、手摺や照明、机の脚に至るまで、住宅に点在する金物や細部を、建築と一体的に検討した。鉄の強さだけに頼るのではなく、木や煉瓦、ビニール、紐といった鉄以外の素材についても打合せを重ね、加工のしやすさや手触り、使われ方を確認しながら、細部のかたちを決めていった。 その結果、手摺りをはじめとする細部は、単なる機能的な装置としての役割を超え、空間の印象や人との距離感に静かに作用する存在となった。特定の名称や用途に限定される装置としてではなく、空間の濃淡を調整する、形容詞的な存在へと転化している。 壁と線で構成された空間に、物質の曖昧な影が差し込み、奥行きが生まれている。

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