Whisky Bank Fukuoka

ビルディングタイプ
その他商業施設

DATA

CREDIT

  • 撮影
    鳥村鋼一写真事務所
  • 設計
    株式会社 STUDIO MOUN
  • 施工
    長崎船舶装備株式会社

福岡市中央区・今泉に位置するウイスキー専門店である。 このPJでは、ひとつの明確な意図から始まった。 それは、「美しさ」を超えて、身体的・感情的に感じ取れる空気を創出し、日常的な都市景観に「敬意」「静けさ」「時間の深み」をもたらすことである。 既存環境は、間口が狭く奥行き14メートルの日本の「長屋」のような形状をしていた。 その奥行きを活かし、かつて修道院によって継承されたウイスキー製造の伝統から、修道院の回廊を参照し、空間全体にわたるヴォールト空間を導入。 これは単なる形状ではなく、訪れる人の感覚を変える「体験の敷居」として機能し、小売空間を一方向的な取引の場ではなく、層を重ねたウイスキーとの出会いの場として再定義している。 空間は、ウイスキーの製造に欠かせない自然要素によって素材と形を表現している。 土(Earth): ヴォールト天井は、山の土採取することから始まり手作業で仕上げている。表面には職人の手仕事が痕跡となり、ウイスキーの熟成庫に漂う静かな緊張感を想起させる。 水(Water): ディスプレイ棚は、手漉き和紙を巻き込み、水の流れとして仕上げ、柔らかな和紙が、ボトルの硬質さと対比を成し、視覚的・触覚的な二面性を生み出している。 木(Wood): テイスティングカウンターとレジカウンターには、大分の樹齢300年のセンの無垢を使用し、端部には彫刻的にブビンガを削り出し組み合わせている。堅牢かつ表情豊かな素材が、空間に永続性と重厚さを与えている。 火(Fire): ウィンドウ沿いには、吹きガラスのドームを照明付きのディスプレイとして製作。その不均一な形状は光を歪め、ゆらめく反射を生み出し、火やスピリッツの揮発性を暗示している。 これらの要素は装飾や説明のためではなく、光・素材・記憶を通じて来訪者の感覚を呼び起こす、重層的で触感的な体験を提供するためのものである。 動線も直感的に設計した。 ヴォールト天井が、エントランスからテイスティング、購入へと人の流れを導き、明確な仕切りはなく、自然なリズムが空間に流れている。ディスプレイは都市の視点の変化に呼応して設計しており、歩道から見るとボトルは逆光に浮かぶシルエットとして現れ、近づくにつれて色やディテールの豊かさが現れる。このような「ゆっくりとした顕れ」は、好奇心と関わりを呼び起こし、製品と通行人の間に静かで意図的なつながりをつくり出す。 素材は、主に九州から調達し、地元の信頼のおける職人たちと協働し、伝統技術を現代的に再解釈することで、空間体験を豊かにしつつ、文化的継承を支え、素材輸送も最小限に抑えている。 この空間は、単なる小売店ではなく、物語・技・都市生活が交差する「感覚の回廊」として静けさと発見のひとときを提供する場である。

物件所在地

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